私が死んだら
あなたは泣くのかしら
−君が泣くとき−
ゾロがシモツキ村を出る少し前
私の祖父が亡くなった
ゾロはお葬式の間中ずっと
泣き続ける私の側にいてくれた
口を真一文字にしたまま黙っているゾロを見て
祖父にあんなに懐いていたゾロが
涙をひとつも零さないことに
少しだけ違和感を覚えた
それはきっとくいなが死んだ日に
壊れそうなほど泣いていたゾロを思い出したから
「ゾロは泣かないのね」
そういう私にゾロは真っ直ぐ視線を投げかけた
「責めているんじゃなくて」
そう伝えると私の考えてることを理解したのか
「悲しいとかじゃねえから。ただ、そうなったって事実を受け止めてる。
爺さんの記憶とか思い出しながら」
そう静かに話した
私たちが身近な人の死を迎えたのは
くいな以来の事だった
あれからゾロも成長し
大人になったということなのかもしれない
男の子だし、そういうものなのかもしれないと
そう思ったけれど
少しだけ寂しく思った
ゾロはもう、誰かが死んでも泣くことはないのかもしれない
冷たいとかじゃなくて
こうして静かに受け入れるのだ
それを責めたい訳ではなくて
ただ
私が死んだときも泣いてはくれないのかと
そう思ったら
少し悲しくなったんだ
泣いても何も変わらないからと
ゾロは言うのかも知れないけれど
もしゾロが、私がいなくなったときに泣いてくれたら
きっと私は嬉しいのにと
ワガママなことを思った
今日はくいなの命日で
私はあの日のように涙を流し
ゾロはあの日のように傍らにいてくれた
「ゾロ、私が死んだら泣いてくれる?」
あの日聞けなかったことが
ぽろりと口から零れた
怒るかな?呆れるかな?
馬鹿なこと言うなとか言われそう
「馬鹿なこと言ってンじゃねえ」
ゾロの拳が頭に降ってきた
手加減しててもちょっと痛い
呆れたように少し不機嫌な顔で溜息を吐くゾロが
あんまりにも予想通りでちょっと笑った
そしたらゾロは眉間の皴をもっと濃くした
私たちはくいなの死で
人は本当にあっけなく死んでしまうのだということを知ってしまったから
こんなことを口にしてはいけないと思っていたのに
そうしてしまったのは
時の流れがくいなの死を
私の頭から薄れさせてしまったからだろうか
そんなことを考えていた私の頭をゾロが小突いた
「お前ェは死なねえよ」
ゾロの言葉に驚いて顔を上げた
誰よりも生の儚さを知っているゾロが
そんなことを口にした事が意外だった
「俺が生きてる間はそんなことさせねえ」
――だから俺より先にお前が死ぬことはねえし
――俺が泣くこともねえ
守ってくれるのだと
そう言ってくれているんだと分かって
また少し泣いた
でも相変わらずの偉そうな物言いが可笑しくて
ちょっと噴出した
「泣いたり笑ったり忙しいやつだな」
呆れたように言ったゾロの目は
ひどく優しかった
「そんな訳だからお前ェの姉さんはまだ当分こっちで預かンぞ」
ゾロが空に向かって呟いた
星がきらきらして
また泣きたくなったから
「あの子お姉ちゃん子だから、アンタ恨まれるんじゃない?」
と憎まれ口を叩いて誤魔化した
「あっち行ったと時、俺シメられっかもな」
ゾロが笑った
「でも今度は負けねェ」
本気で言ってるのが可笑しかった
1勝2001敗になる日はいつだろうと思った
2002敗目になったら笑ってやろうと決めた
「ねえゾロ。じゃあ死んだ時は泣かなくても良いから
私の結婚式の時は泣いてね」
見上げて言うと
ものっっ凄く嫌そうな顔をしたのでまた笑った
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