が叶えたかったこと−


昼寝から目を覚ますと、いつの間にか知らない島に停泊していた。
船を見渡しても他の連中は見えず、また俺が船番かよと悪態を吐いた。
しかし、聞こえてきた足音に振り向くとそこにはがいて
「あっ、起きてる」と嬉しそうに笑った。

俺が起きたら一緒に街へ出ようと待っていたらしい。
タイミング良く戻ってきたウソップと船番を交代して俺たちは街へと向かった。


「・・・おい、この手はなんだ?」
引っ張るように俺の左手をしっかり握るの右手。
「だって繋がないとゾロ迷子になるもの」
・・・ガキか、俺は。
いい年した男と女が手繋いでんのに、色気のかけらもねえな。



街に着くとは服屋に入り色々物色し始めた。
でも手に取るのは何故か男物ばかり。
「あ、これゾロに似合いそう!」
「なんで俺のを見てんだよ」
「いいからちょっと着てみてよ。あ、腹巻は取ってからね」
・・・めんどくせえ。
しかしぐいぐいと試着室に押し込まれ、仕方なく言われた通りにした。
カーテンを開けると、俺を見たが満足げに微笑む。
「思った通りね、良く似合う。着た感じはどう?」
「・・・着れりゃなんでもいい」
「あはは、ゾロらしいわ。よし、これ買おう!」
「あぁ?金なんてねーぞ」
「良いのよ、私が買うから」
「別にいらねー・・・」
「いいの!私が買いたいんだから。すみませーんっ」
別に気にいらねェ訳じゃねえが買ってもらう理由もねェし。
だがすでに店員に支払いを始めているを見て、好きにしろと諦めた。

店を出るとはまた俺の手をとって嬉しそうに歩き始めた。
「ふふっ、弟が大きくなったらこうやって服見立てたりして、一緒にデートするの夢だったのよね〜」
楽しいな〜、と上機嫌なは今に鼻歌でも歌い出しそうだ。
「なんだそりゃ?そんなん彼氏とやっとけよ」
「またまたー、サンジとデートしてたら面白くない顔するくせにぃ」
「けっ、するかよそんなこと。っつーかこんなとこコックに見つかったらまたうるせェぞ」
「んー?じゃあ見つかったら反対の手でサンジと繋ごうっ」
うわっ私両手に花じゃんっ、とかなんとかアホなことをぬかしているに再びため息を吐く。
「花ァ?ぜんまいの間違いだろ、あんなぐるぐる」
「あははははは!じゃあゾロはサボテン?」
「やかましいっ!」


他愛も無い話をしながらぶらぶら歩く。
すると今度は露天の服屋の前でが足を止めた。
「あっ、これ可愛いねぇ」
布の面積が殆どねェひらひらした服。
「お前ェがこんなん選ぶの珍しいな」
露出度の高い格好をあまり好まないにしては意外な感じがした。
「いやねー、私にはムリよ。ナミに似合いそうだなと思って」
あの子スタイル良いからなんでも似合うのよねー、と自分の事のように嬉しそうに話す。
・・・お前ェだって十分いいじゃねぇか。
ナミやロビンみてぇに露出度の高い格好はしねぇが、そんなん服の上からだって十分見て取れる。
むしろ見えねぇからこそソソられるっつーこともあんだ・・・って
・・・俺は何考えてんだ・・・。
第一、そんな服着たらコックが鼻の下伸ばして騒ぐのは目に見えてる。
うぜェから止めといていいんだ。うん、そうだ、そういうことだ。
俺が自分の中で勝手に自己完結している間に、はまたいつの間にか購入を済ましていた。


「・・・なぁ、お前さっきから人のもんばっか買ってねぇか?」
「えー?だって楽しいんだもん。特にナミの服選ぶの好きなんだよねー」
ロビンのも楽しいけど好みが難しいんだ、と嬉しそうに笑う。
そして今度は装飾品の露天で、あ!これも似合いそう!とオレンジ色の髪留めを手に取った。

前から思っていたが、どうにもはナミに甘ェ。
もともと面倒見の良い性格だし、他の連中のことも可愛がっているが
ナミに対しては特にそれが強い気がする。


ふと、もしかしたらは、こういうことをくいなにしてやりたかったんじゃないかと思った。
服選んでやったり、小物で飾ってやったり、一緒にぶらぶら歩いたり・・・。
だから年下のナミにくいなを重ねて甘やかしているんじゃないだろうか。
・・・俺にこんな風にするのと同じように。


物思いに耽っていると、が不意に立ち止まった。
振り返るとそこには大きなショーウィンドウがあり、中には純白のドレスが飾ってある。
綺麗ね、とうっとりとした表情でそれを見つめるに一抹の不安が過ぎる。

「・・・なぁ、お前、コックと結婚する気なのか?」
俺の言葉に少し驚くと、は困ったように笑った。
「うーん・・・まぁ、付き合ってるんだし、考えたことがない訳では無いけど・・・」
なんだか煮え切らねぇな。
「ほら、言ってもまだサンジは19でしょ?そんなのを望むにはまだ早いっていうか」
今から縛っちゃ可哀想じゃない、と笑ってみせたけれど、どこかせつない感じがする。
「私が可能性を奪うような真似はしたくないのよ」
「可能性っつーのは、あいつが他の女と結婚する可能性か?」
は苦笑して、否定はしなかった。
「・・・あいつが聞いたら落ち込むんじゃねぇか」
もしかしたら怒鳴るかもしれねぇ。
「ふふっ、そうね。だから秘密ね」
口元に人差し指を立てて笑っている。・・・阿呆、笑ってんじゃねーよ。

そんなに盛大なため息を吐くと、歩き出したその頭に顎を乗せ
両肩に腕をかけると、思いっきり圧し掛かってやった。
「ちょっ!ゾロ重いって!いきなり何・・・!?」
「アホかお前ェは!何あんなクソコックに遠慮してんだ」
「いや、別に遠慮とかじゃ・・・」
「大体お前ェは自己評価が低過ぎんだよ!あんなアホにお前は勿体ねェくらいなんだから
 っつーか勿体ねェ!やっぱ別れろ!」
「ゾ、ゾロ?」
「大体そんな中途半端な気持ちでアイツがお前ェと付き合ってるっつーなら、俺が許さねェ!」
「・・・ゾロ」
「まぁ結婚してぇっつっても許さねェけどな」
「・・・どっちなのよ」

ようやくは、いつもの笑顔で呆れたように笑った。
つられて俺も口の端をあげると、の頭をぐしゃぐしゃと撫ぜた。
「ほんっとシスコンね」
「うるせェ。ほら、行くぞ」
俺が左肘をちょっと挙げて見せると、は不思議そうに俺を見た。
「・・・デートなんだろ?」
ちょっと目を丸くすると、すぐに嬉しそうに笑って俺の腕に自分のそれを絡めた。
クスクスと可笑しそうに笑う。きっと俺の面は赤ェんだろう。
でも楽しそうなコイツの顔を見ると、まぁいいかと思っちまうあたり、俺も大概コイツに甘ェなと自覚した。

「もしシモツキ村に帰る前に結婚式することになったら、ゾロが一緒にバージンロードに歩いてね」
こんな風に、と無邪気に腕にしがみつく
「アホか、そんなんちゃんとコウシロウ先生に許可もらってから挙げろ。っつーか先生にあのコック伸してもらえ」
大体、もしそんなことになってみろ。俺はコックに渡す前にお前抱えてバージンロード逆走すンぞ。
そういうと、やっぱりシスコンだと笑った。
「お父さん別に怒らないと思うけどなぁ」
「あのアホラブリンが相手でもか?俺ならキレんぞ」
「だってお父さん、彼氏が出来るたびにいつも僕の分までゾロ君が怒るから自分の出番が無いって言ってたもの」
「・・・よし、じゃあ先生の期待に応えて、あのメロリン馬鹿は俺が殺る」
「・・・応えなくて良いから」

は遠くを見つめながら目を細め、懐かしそうに「お父さん元気かな・・・?」と呟いた。
「ねぇゾロ。ちゃんと・・・一緒に帰って、大剣豪になったって・・・お父さんと、くいなに報告しようね」
抱きしめる腕と言葉に、僅かに力がこもる。
いつも屈託なく笑って気丈にしていたが、多分、本当はずっと不安を抱えていたんだろう。
俺の進む先に、死が、訪れることを。

俺は空いている方の手で、またの頭をわしわし撫ぜた。
「あったりめェだろーが」
はふふっと笑って、だよねと答えた。俺はそれに・・・と、ニヤリ口端を上げる。
「少なくともお前ェの花嫁姿見るまでは死なねェよ」
だから心配すんな、と言うとは複雑な顔をした。
「そんなこと言われたらあんたが大剣豪になるまで結婚できないじゃない」
「ならしなきゃいーじゃねぇか」
満面の笑みで答えてやると、呆れたように溜息を吐いた。
「・・・お願いだから、適齢期過ぎる前に叶えてね」
「おー、まかしとけ」

どうだか、とがまた呆れたように笑う。
少しでも早く、野望を叶えて友に伝えたいとばかり思っていたが
出来るだけ引き伸ばしても良いかもしれねぇなと、心の中で笑った。
適齢期が過ぎたら俺がもらってやるよと思ったことは口に出さず。
とりあえず今は腕にしがみ付いてるこいつを見せ付けて、コックをキレさせてやろうと
今度は顔に出してにやりと笑った。







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 ゾロがシスコンて楽しくないですか?あれ私だけ?