いつもより飲むペースが早いことだとか
無理してはしゃいでることだとか
時々悲しげに向ける視線の先だとか
気づいてしまったのはきっと、ただの偶然なんだ
−嘘つきなサンタ−
がふと宴の輪を抜けて行くのを見つけて俺はつい後を追ってしまった。
船尾で船縁に凭れ掛かって海を見ているその背中に何やってんだー?と声を掛けると
「酔ってゲロ吐きそう」
と笑顔で答えた。
・・・いや、お前それそんな爽やかに言うことじゃねーし。
俺のツッコミにけらけら笑って、そうだねーとか言いながらは蹲る。
おいおい、大丈夫かよと呆れながら手を掛けようとしたけどその手は宙で止まった。
どきりとした。その肩が小さく震えていたから。
いつも明るくて、俺達と馬鹿騒ぎしてるからは想像つかないくらいその姿は弱々しくて、小さく見えた。
躊躇いながら呼びかけると小さく、まるで消えてしまいそうな声が聞こえた。
「助けて・・・」
「・・・お前・・・」
震える声にただならぬ雰囲気を感じて俺は動揺を隠せず、途中まで出しかけた手の行き場に迷った。
掛けてやる言葉が出てこずにうろたえていると再びが小さく息を吸うのが分かった。
「助けて・・・っそげキングぅ〜〜〜〜!」
「・・・・・・・はぁ!?」
唐突に一変した暢気なノリに素っ頓狂な声を上げれば、はしてやったりと舌を出して笑った。
なんだよも〜泣き真似かよ!?なんつー性質の悪ィ冗談だ!
「お〜ま〜え〜なぁ〜〜、心配しただろーがッ!」
がっくりしながらへたり込む俺を見て可笑しそうには笑う。
「おっかしーなぁ、そげキングに助けに来てもらおうと思ったのにぃ」
「ヒーローは忙しいから、いちいち酔っ払いの戯言には付き合ってらんねーんだよ」
ざ〜んねんっとか言いながら、コイツはちっとも残念そうじゃない。
やれやれとポーズを取りながら正直俺はほっとしていた。がバカ話出来るくらいに元気だったことに。
「仕方ねェなー、変わりにこのキャプテーン・ウソップ様が悩みを聞いてやろうじゃねェかッ!」
「はいはいっ!キャプテン!」
「おうっ、なんでも言ってみろ!」
「サンタさんは来ないんですかぁ〜?」
・・・この酔っ払いめが。
「・・・自分の気持ちに素直になれない奴のとこには来てくんねェんじゃねーの?」
はちょっと面食らったような顔をした後、苦笑してぽつりと呟いた。
「じゃあ私のとこには来てくんないね・・・」
の視線の先にはいつもあいつがいるから。
いつも子供みたいに笑ってるだけど、あいつを見る時はちょっと違う表情をするから。
の気持ちなんてすぐ気がついた。
今日だってあいつがナミやロビンにいつもみたいにメロリンしてるのを見てられなかったんだろう?
全くなんだって俺はそんなことに気づいちまうんだか。目敏い自分を呪いたくなるぜ。
ふと、の手に何かが握られているのに気づいた。
「、それは?」
「え?あぁ・・・・・いる?」
小さな小箱は明らかにプレゼント仕様。いる?なんてどう考えても俺用じゃねェじゃねーかとツッコみながら
箱から出してみると、それは海みたいに深いブルーのカフス。どう見てもこりゃ・・・
「もらっても俺は付けねェしなぁ」
「ははっ、だよね・・・」
そういうとは俺の手からそれを奪い、突然海に投げようとした。
俺は驚きながらも間一髪それを止めることが出来た。
「ば、バカッ!何してンだよ!」
「・・・だって、もういらないもの」
「渡せばいいじゃねーか」
はきゅっと唇を噛んでふるふると首を振った。
「こんなの渡しても迷惑になるだけだもの。脈がないことは分かってるし・・・。
なんでこんなの買っちゃったんだろうな。クリスマスで浮かれてたのかな」
乾いた笑いを漏らすが痛々しい。俺は居た堪れなくなって、の頭をぐりぐりと撫でた。
「いらねェんなら俺がもらうよ。新しい発明の役に立つかもしれねーしな」
「・・・ありがと、ウソップ」
「いいってことよ。友達じゃねーかっ」
だから、その涙は見なかったことにしてやるよ。
もう少し風にあたっていたいというを船尾に残して俺が先に戻ろうとすると、ラウンジ前でサンジに呼び止められた。
「なぁ・・・ちゃんどうかしたのか?」
「なんでだ?」
「いや、ずっと元気ねェから気になって・・・」
らしくなく言葉を濁して船尾に送る視線には、いつものラブコックとは違う色が含まれていた。
・・・なんだ、、お前脈あるじゃねーか。
俺は苦笑を隠しながら、手の中の感触に良い事を思いついた。
「あ、そーだサンジ、これお前のか?」
カフスを渡すとサンジは首を傾げた。
「いや、俺のじゃねェな。どうしたんだコレ」
「そうかぁー、おっかしーな。こんなの付けるヤツこの船にはサンジしかいねェからてっきりお前のだと・・・。
捨ててあったんだよ、このラッピングに包まれて」
サンジはそのカフスを手に取りながら何かを考えるようにそれに見入った。俺はにやりと口端をあげる。
「もしかしたら臆病なサンタが怖気づいて渡せなかったプレゼント、かもな?」
サンジははっと顔を上げて俺を見たが、俺はメシ食いなおしてくるなーと平然を装って船首の方へと歩き出した。
しばらくすると背中で革靴のたてる足音が船尾へと向かうのを感じた。
それに満足して空を仰げば、粉雪がちらちらと舞いだしていた。
、こんなロマンチックにお誂え向きの聖夜にそんなしけた面似合わねェだろ?
俺はサンタじゃねーから、お前が本当に欲しいプレゼントなんて渡せねェけど
代わりにとびきりの嘘をお前にやるよ。
あとはお前が勇気を出すだけだ。
心配すんな、狙撃の島はお前の心の中にあるんだからよ!
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プレゼントは優しい嘘を。お返しはとびきりの笑顔を。