他の仲間とは違っていつも一緒にいられるわけじゃねえ。
それでも他のみんなと同じように、大切な仲間だと俺は思ってる。
俺がそう思うまでに時間がかからなかったのは、メリーを見るの目に
特別な想いを感じたからだったのかもしれない。




 −Dear friends−




新しくこの船のクルーになったそいつは不思議なヤツだった。
ある日突然俺たちの船に文字通り降ってきて、かと思えば唐突に消えたりして。
初めはオバケか能力者かと大騒ぎしたが、本人の話じゃ異世界ってとこから来たらしい。
それだけでも十分嘘みてェな話なんだが、さらには俺たちのことと、
そしてこの世界に起こる少し先の未来が分かるらしかった。

そんな御伽噺みたいな話誰が信じるかと言ってやりてェとこだが
生憎俺たちはグランドラインで信じられねェもんを目の当たりにすることに慣れちまってる。
おかげで恐ろしい速さで俺達はの存在を受け入れ、
予想を裏切らず「空から降ってきた不思議人間ー!」とかはしゃぎだした船長の強引な勧誘によってはこの一味に入った。

ただ未来のことを口にすることはご法度らしい。
ロビン曰く、未来が変わることによって世界の均衡が崩れてどうのとか。
あー世界の均衡ねー、アレなー、昔よく遊んだよな〜“世界の均衡”・・・とまァ俺とルフィはそんな反応だったけど。
はそれをものすごく申し訳なさそうにしていた。
「未来が分かっちまったらつまんねーじゃねェか」と一蹴したルフィの言葉でほっとしてたみたいだったが。
まぁなー、ちょっと知りてェ気もするけどこの世がぶっ壊れちまうっつーんじゃ仕方ねェもんなぁ。
そんな感じで俺も、他のクルー達も別段それを深く気に掛けたりはしていなかった。


一味に入ってからも元の世界とこっちの世界を行ったり来たり繰り返している
船にいる間は離れていた時間を埋めるかのようにクルー達と時間を共有していた。
ルフィやチョッパーと遊んだり、ナミやロビンと話したり、サンジの料理を手伝ったり、ゾロのトレーニングに付き合ったり。

もちろん俺のところにもやってくる。
それはウソップ工場で発明している時だったり、絵を描いている時だったりと様々だけど
特にメリー号を修理している時は必ずと言っていい程側にやってきた。
うちのクルー共は俺がいくら船大事にしろっつったって聞きゃしねぇ。
全く直すほうの身にもなれってんだ、俺は船大工じゃねえっつーの。
ぶちぶち文句を零しながら修理していると、はその側にちょこんと座ってにこにこしながらそれを見ていた。
修理してるの見てたって面白くなんかねェだろ?って聞くと、ううんすごく楽しいよってまたにこにこ笑うんだ。

「だってウソップのメリーに対する愛情をすごく感じるから」

そう言って見惚れるくらい綺麗に笑ってみせる。
その笑顔と言葉に俺はつい真っ赤になっちまって。
照れ隠しに変なヤツなんて嘯いてみるとはクスクス笑っていた。
俺はどうにもくすぐったくなっちまって、お前だってメリーのこと好きなくせによーってからかい混じりに小突いてやった。
するとは目を伏せて。そして、ゆるりと微笑んだ。


「うん・・・すごく、大好きだよ」


その笑顔はいつも通りのはずなのに、なんでか俺にはすごく切ないもののように見えたんだ。

それから妙に気になっちまって気づけばを目で追うのが癖になってた。
そしてある時気づいたんだ。
ふとした瞬間が船首に向ける辛そうな眼差しに。

俺が話しかけるとすぐにいつもの笑顔に戻って何気ない風を装うから、その理由はいつも聞けずじまいだった。








それから本当に色々なことがあって・・・俺たちはメリー号と別れた。


久しぶりに船に現れたが前甲板に立って船首をじっと見つめている。
その姿を見て、ああ、があんな顔してたのはこの別れを知っていたからだったんだなと今更ながらに理解した。


サニー号の船首を眺めているの隣に並ぶとこちらを一瞥して、そして苦しそうに俯いた。
メリー号との別れを知っていたのに言わなかった事を俺が怒っているとでも思ってるんだろうか。
そりゃあ言って欲しかったって気持ちがないって言ったら嘘になる。
けどよ、言えなくて、どうすることも出来なくて、一番苦しんだのはお前だろう?
一人で抱えるしかなくてずっとずっと苦しんでたんだろう?
そんなお前を誰が責められるってんだよ。

そう言いたかったけど、そう伝えたかったけど。
これから先もこいつはそんな思いと戦わなくちゃならないんだと思ったらうまく言葉にならなくて。
俺は黙ったままの手を取った。


「・・・メリー号は俺達の仲間だ」


がこちらを向いたのが分かったけど、俺は船首の方を向いたまま言葉を続けた。

「決別したってメリーの勇敢な魂は新しいこの船に、そして俺達の心の中に生き続けて一緒に旅をしてるんだ。
 だから、今も昔も変わらず、メリー号は俺達の仲間だ」

口にすると、炎に包まれて海に沈んでいったメリーの姿が頭を過ぎって、思わず鼻の頭がつんとした。
誤魔化すように鼻の下を擦って声を張り上げる。

「アラバスタで下船しちまったビビだってそうだぜ?夢の行く先が違っちまったから別れるしかなかったけど
 でも俺達は絶対に一緒に過ごした時間を忘れねェし、また出会えたら俺達は迷わずアイツを仲間って呼ぶんだ」

王女が仲間なんてすげェよな?って笑いながら言えばも小さく笑んで頷いた。
その頼りない手を一層強く握り締める。


「そんで、、お前もだ」


目を瞠ってこちらを向いたに笑ってみせる。
握り締めた手が小さく震えた。きゅっと結んだ赤い唇も耐え切れず微かに。


「時々しか一緒にいられなくても、未来のことが話せなくても関係ねェ。
 お前は立派な麦わらの一味で、大事な大事な俺達の仲間だ!そうだろ?」


大きな目から溢れ出した涙は、後から後から溢れて。
漏れそうな嗚咽を手で押さえながらは何度も頷いた。
それに笑って、俺はまた誇らしげに掲げられたフィガーヘッドを見つめる。
新しい仲間は愛らしくも勇ましいたてがみを潮風に揺らしていた。



女の涙は苦手なんだけどな、でも今はいいや。
気が済むまで泣いとけ。
けどな、泣き止んだら覚悟しとけよ?
泣いた100倍笑ってもらうからな!
あ?100倍は大げさだって?
バーカ、俺様を誰だと思ってんだ!
そうっ、キャプテ〜ン・ウソップ!様だーッ!




くすくす笑う横顔に、やっぱりは泣き顔より笑顔の方が似合うと思った。

ふいにきゅっと力がこもった小さな手が嬉しくて。
俺達は並んで手を繋いだままいつまでも海を切り分けて走る風を感じていた。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ウソップはぴば〜!(080401)