Wash In−


「なぁ〜、一緒に風呂入ろうぜ〜」
「イヤ。っていうかシャンクスお酒臭いっ」

へべれけになっているシャンクスに辟易しながら船へと戻る。
着いた島でいつものごとく宴会をしていたのだが、いつになくペースの早かったシャンクスに強制連行されて戻った。
やけに機嫌よく酔っ払ったシャンクスは唐突に風呂に入ると言い始め、一緒に入ろうと執拗に誘ってくる。
今更ながらにご愁傷様と笑いながら見送ったベンやヤソップ達を恨めしく思った。

「なぁ〜〜」

私に圧し掛かるようにしながら甘ったれた声を出すオッサンにこめかみが疼くのを感じる。
まったく誰だコイツに四皇なんて大それた称号をつけた奴は。
そいつを引きずり出して今すぐこの醜態を見せ付けてやりたい。
飲んだくれのオッサンと化したこの男を前にすればきっとそんな称号剥奪したくなること請け合いだ。
まぁこの人にしたらそんな称号あろうがなかろうが関係ないんだろうけど。

未だになぁなぁと喧しく媚びてくるシャンクスを前にどうしたもんかと頭を悩ませる。
一人で入れと今すぐ目の前の風呂場に突っ込んで立ち去りたい所だけど
見るからに泥酔している人間を一人で風呂に入らせるのも怖いものがある。
赤髪のシャンクスが酔っ払って風呂場で溺死なんてことになったら情けなさ過ぎて泣くに泣けない。
頭痛を感じながら諦めて私はため息を吐いた。

「一緒には入らない・・・けど、背中は流してあげる」

言えば耳を立て尻尾を振りそうな勢いで喜ぶシャンクスに苦笑する。
とてもじゃないけど名の知れた海賊団の船長には見えない。けれどそんな彼を可愛く思ってしまうのだから私も大概重症だ。

変な気起こさないでねと釘を刺せばへいへいとニヤケながらいい加減な返事をする。
どうにも胡散臭いその返事に、おかしなことしたらぶつからねと重ねて戒め服を脱ぎ去ったシャンクスを浴室に押し込んだ。


掛け湯をして椅子に座ったシャンクスの背後でスカートを膝上で結び立ち膝を突いた。
タオルに石鹸を泡立て、広い背中をごしごしと擦る。
気持ちいいなァとご機嫌で鼻歌を歌うシャンクスに声に素っ気無い返事をしてみせるけど。
内心ではその逞しい背中を前に鼓動が早くなる自分を決まり悪く思っていた。
筋肉質な体はとても四十近いようには見えない。
あちこちに古い傷や真新しい傷が散らばっているが背中は至って綺麗で。
『背中の傷は剣士の恥』と言っていたミホークの言葉を思い出し、やはりこれもシャンクスの偉大さなのかなとこっそり思う。
そして視線はつい左腕の付け根へと吸い寄せられた。


十年ほど前、少年を助けるために失ったという左腕。
その切断部を泡のついた指でそっとなぞるように触れれば気づいたシャンクスがこちらを窺ったのが分かった。

「・・・痛かった?」
「どうだったかな・・・食いちぎられた時は案外平気だったかもな。
 ほら、戦ってる最中とか気分が高ぶってる時って怪我しても感じねェだろ?ただその後がなァ・・・」
「辛かったんだ?」
「だってよぉ、ベンには呆れられるし、ヤソップ達には笑われるし、鷹の目の野郎は相手してくんなくなるしよぉ〜」

子供のように剥れてみせるシャンクスに笑いながらお湯を掛けて泡を流す。
痛くないはずなどなかっただろうにそう口にしないのは彼のプライドか、はたまたその少年のためか。

「後悔したことはない?腕を失ったこと」
「ない。・・・・・・・・と、言いたいところだが」

意味深に言葉を区切ったシャンクスを不思議に思い覗き込めば、ニタリと笑んだ。


を抱く時だけは両腕ありゃあなァと思うな」


片腕じゃ色々制約があるしなと悪戯に口端を上げるシャンクスに思わず赤面して
馬鹿なこと言わないでと頭から湯をかけてやった。
しかし一向に悪びれもせず、濡れた髪をかき上げながら
そうすりゃもっと満足させてやれんだけどなァと本気だかなんだか分からない口調で言い続ける。
赤い髪から湯の雫が幾筋も伝い落ちていく様がやけに扇情的に映った。

そんなシャンクスに頬を熱くしたまま、その濡れた背中にそっと額を押し付ける。


「冗談じゃないわ。片腕のままだってどうにかなりそうなのに・・・片方無くなって丁度良かったわよ」


憎まれ口のつもりで言い放った言葉にシャンクスが動きを止め、やがて微かに背中を揺らした。
そしてぐいっと力強く引き寄せられ。
気づけば私はシャンクスの膝の上に居て片腕でしっかりと支えられていた。
シャンクスが笑みを含みながらからかうように私を見上げる。


「お前俺に自分で釘刺したくせにそっちから誘ってどうすんだ」


余裕ありげな笑みを浮かべるシャンクスの表情はとっくに捕食者のそれになっていて。
湯にも浸かっていない体が一気に熱を持った。顔が火照っているのが自分でも分かる程に熱い。
咄嗟に誘ってなんかいないと否定しようとしたけれど、自分の言葉を思い返せばそう取られても仕方がないかと今更気づく。
煽るような強い眼差しから視線が逸らせず、もう抗えないのだと惹かれるようにその燃えるような赤髪に指を差し込んだ。
口付けながら、しなやかな躰に魅せられ中てられていた私は案外始っからこうなることを望んでいたのかもしれないと小さく笑った。












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 初シャンクス。そして撃沈・・・orz