「いやァ〜、それにしても驚いたなァ〜!」
「驚いた所の話じゃないわよっ!寿命縮まるかと思ったわ!」
げらげら笑うルフィにナミさんが怒鳴る。

「ごめんなさいね驚かせて」
「悪いと思うなら最初っからするんじゃねーよ!」
「だーって、この島にゾロが来てるって情報を入手したから。
 せっかくの再会だし?面白くしたいなーと思ってわざわざ仕込んどいたのよ」
「面白くなくていい!フツーに来い!」

鬼のような形相で怒鳴るゾロに全く怯む様子も無く、さんは心底楽しそうだ。
ラウンジでテーブルを囲む面々に俺はお茶を並べながらさんとゾロをちらり見やった。

「こんなお美しいレディーがクソ剣士と姉弟だなんて・・・」
「世も末だな・・・」
「さすがは何でもありのグランドライン・・・」
「海って不思議だなぁ・・・」
「不思議姉弟だなっ」
「フフッ、興味深いわね」

「テメーら・・・言いたい放題言いやがって!」
「ゾロ、お友達にそんな怖い顔しないの」
め、とゾロを戒めるさん。なんつー珍しい光景・・・。

「こんな奴ら友達じゃねぇ!っつーかテメーが紛らわしい事言うからこんな状況になってんじゃねぇか!!」
「だってほんとに姉みたいなもんじゃない」
「“みたいなもん”と姉は違うだろうが!」
「大して変わんないってー」
「変わるわ!!」

ころころと笑うさんに怒鳴り続けるゾロ。
どうやら違うらしい・・・。違うのか、と思わず胸を撫で下ろす。

「本当はね、幼馴染なの。でもこの子が生まれたときからずーっと一緒にいたから本当の弟みたいに思ってるのよ」
にこやかに話すさんの言葉にゾロがそっぽを向いて顔を顰めた。
コイツなんか照れてねぇか?クソ気持ち悪ィ・・・。

「それで、お前ェは何でこんなトコに居んだよ。・・・もしかして俺のこと追っかけてきたのか?」
「やだなぁ、自惚れないでよね。私は私の夢の為にグランドラインに入ったのよ」
「夢?」
「なんだ?もしかしてお前ェも海賊王になりてーのか?」
そりゃ俺がなるから駄目だぞ!とルフィが胸を張って威張る。
お前ェじゃねんだから馬鹿な事ほざくなクソゴム。

「ふふ、残念だけど海賊王は目指してないわ。私が目指しているのはコレ」
さんがリュックにある刀を指差した。
「私はね、より強い刀を求めてグランドラインに来たの。今持っているのは業物と良業物だけれど
 ゆくゆくは、最強の刀と言われている最上大業物を手にいれたくてね」
「・・・なんでお前が?刀に執着なんてあったか?」

訝しげな顔をするゾロにさんが小首を傾げた。
「別に剣士の娘が刀に執着もったっておかしくないでしょう?」

剣士の娘という言葉に、さっきの太刀捌きを思い出して合点がいった。しかし疑問が残る。
「でもさん、さっき自分は剣士じゃないって言ってたよね?コレクターってこと?」
「ううん、まだ続きがあるの」
さんは俺ににこっと微笑みかけてくれた。

「その刀を手に入れたら、私はそれを新たなる大剣豪へ渡すつもり」
「・・・どういうことだ?」

「大海賊時代と言われる今。時代の節目とも言えるかもしれない。
 私は絶対に現世界一のジュラキュール・ミホークと肩を並べる剣士が現れると信じているの。
 でももしもその力が互角だった場合、その武器が勝敗を大きく左右するわ。
 彼の“黒刀・夜”と対等にやりあえるのは、世界に12工しかないと言われる最上大業物のみ。
 私はそれを探し出して、新たなる剣豪の誕生をこの目で見届けたいの」

それが私の夢・・・と、彼女は力強い眼差しで語った。

「なんでお前ェはそれを見たいと思うんだ?」
「・・・その夢を叶えられたかった、大切な人の代わり、かな」
さんの言葉に、ゾロがぴくりと反応を示した。
いつも通りの仏頂面だが、その表情はどこかに思いを馳せているようにも見えた。


「でもよぉ、それじゃあやっぱりゾロを追ってきたんじゃねェか」
だってゾロが大剣豪になるんだしなぁ?とルフィは当然のように言い放つ。

「・・・、お前・・・」

真剣な表情で見つめるゾロに、さんは一転してからかう様な笑みを浮かべてゾロのデコをぴんっと指で撥ねた。

「だーっから、自惚れないでって言ってるでしょー?誰がアンタにやるって言ったのよ」
「・・・あァ!?」
「ゾロが大剣豪なるっていうから、あげても良っかなーと思ってたけど
 どーやら一回ざっくりやられちゃったみたいだしぃ?」
さんは言いながらゾロの腹にあるデカイ傷跡を指でなぞる。
「あれ一回きりだ!俺は二度と負けねぇ!」
「そぉ?まぁ別にアンタじゃなくたって私は良いのよ?
 もしかしたらどっかのカッコいい殿方がなるかもしれないじゃない。
 そしたら私はその刀を献上して取り入って、うちに婿にでも来てもらえば実家の道場も安泰だしねぇ」

満面の笑みでうきうきと話すさんに、ゾロが口を開けたまま固まった。
やがて盛大な溜息を吐くとニヤリと方頬を上げる。

「言ってろ。でもよ、悪ィがお前ェの婿とやらは絶対に現れねぇぜ?大剣豪には俺がなるからな」
「ふふっ、お手並み拝見といこうじゃない」
憎まれ口を叩きつつも二人はなんだか楽しげだ。
そこには目には見えない絆が感じられ、何故かふと俺の胸はざわめき立った。


「しっかしお前ェオモシれぇなー!よぉっし決めた!!お前、俺達の仲間になれ!!」
「え?・・・ええっ!?」
ルフィの突拍子も無い言葉にさんは目を丸くし、俺達はまた始まったと頭を抱えた。

「だってよぉ、どーせゾロに刀渡すんだから、最初っからこの船で一緒に行きゃ良いじゃねェか」
「や、でもそんな・・・簡単に決めて良い事じゃないんじゃ・・・?」
、諦めろ。うちの船長は言い出したら聞かねぇんだ」
ゾロは至極楽しそうに口端を上げる。
まぁもちろん俺だってさんが乗船してくれるのは大歓迎だ。

「ごめんなさいねぇ、勝手な船長で」
「よしっ!このキャプテーン・ウソップ様も許可してやろうっ!」
「オレ、新しい仲間が増えて嬉しいゾ!」
「よろしくね、剣士さんのお姉さん」
さんと一緒にいられるなんて幸せだーーー!!!」
「てめェ!に手出すんじゃねーぞ!」
「なんだ、やんのかクソマリモ!!」
「やってやろうじゃ・・・・」

「あははははははははっ!!!!」

ゾロが俺にかかってこようとした瞬間、突然さんが大笑いし始めた。
「あ、あんた・・・マリモって呼ばれてんの・・・!!?」
涙を浮べながら笑うさんにゾロの顔がみるみる赤くなる。
「クソコック!てっめェ余計な事をっ・・・!」
「ぴったりじゃねぇかマリモヘッド」
「マリッ・・・!ひーっ!やめてっ・・・お腹苦し・・・・!!」
「てめェも笑い過ぎだっ!」
身内の前で恥かくのは相当キツイだろう。いい気味だぜ。

「マジで叩っ切ってやる!この素敵眉毛!」
「望むところ・・・」
「あははははっ!えぇ〜!?それ指摘してイイとこなの!?」
まゆっ・・・!眉毛っ!!と笑い転げるさんの言葉がぐっさり俺の胸に刺さる。

さん、そりゃあんまりだぜ・・・」
「・・・・ごめっ!!ごめんね、サンジくっ・・・!!」
さんにつられて爆笑する他のクルー達の中で俺はがっくりと頭を垂れた。


ようやく落ち着いてきたらしいさんは、目じりに溜まった涙を拭う。
「はぁ・・・あー面白かった・・・。じゃあ、改めまして」

さんはみんなを見渡して眩しい笑顔を見せた。

「不束者ですが、不肖な弟共々よろしくお願いします!」
みんな思い思いの笑顔を返す。
「っいよぉーーーっし!宴だぁーーーーー!!」
「その前に出航でしょーがっ!」
ゴンっ!とナミさんに殴られるルフィ。
「じゃあ出航ぉーーー!!そんで宴ーーー!!サンジ肉ぅーーーーー!!!」
「はいはい、畏まりましたキャプテン」

さんへちらりと視線を向けると、綺麗に微笑んだまま口元が「よろしくね」と動いた。
見惚れそうになるのを堪えて「こちらこそ」と返しながらも、俺は胸が高鳴るのを感じていた。

そんな風に慌しく、俺とさん(とその他)の船旅は幕を開けたのだった。









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