あの後俺たちはラウンジへ移り、抱き合ったまま眠りについた。


目を覚ますとクルー達がいつのまにか帰ってきており、数人がものすごくにやにやとした顔で俺たちを見下ろしていた。
気付くと腕の中のさんがむちゃくちゃ真っ赤になりながら、お願いだから腕離して・・・ともがいていた。
どうやら先に目覚めたさんが腕から出ようとしたが、俺はテコでも離れなかったらしい。

離したくねェなと心底思ったけど、このままじゃさん茹って死んじまうんじゃねェかと心配になり、しぶしぶ解放した。
すると途端にさんはするりと腕を抜けて一目散に逃げていってしまった。

残された俺は相変わらず好奇の目に晒され続け
照れ臭さと邪魔された不愉快さで胸クソ悪ィから腹いせに長鼻とクソゴムを蹴飛ばしといた。

そんな様子を呆れながら笑って見ていた麗しい航海士の号令で俺たちは船を動かし出航した。



そして、その後の彼女はと言えば・・・。
まるで何事もなかったかのように見事にけろりとした態度で。
俺はもしかしてあれは夢だったんじゃないかと不安になる程だった。

それでも時折見せてくれる甘い表情や、頬を染める様子が俺を安心させ、そして益々彼女の虜にさせるのだった。
これでやっと思う存分いちゃいちゃ出来る!
・・・・と、思ったのだが。


「ヘッ、世の中そう甘くねんだよクソコック」

〜〜〜ッんのクソ野郎はぁぁぁあーーーッ!

「毎回毎回毎回毎っっ回!俺がさんに近づこうとする度邪魔しやがって!このお邪魔虫マリモンがっ!!」
「当然だろ?俺はまだお前がと付き合うの認めた訳じゃねェからな」
「この期に及んでまだグチグチと!っつーか俺はまだお前ェがさんの唇を奪ったこと許してねーからな!
 さんに止められてなかったら、お前ェなんてギッタンギッタンのメッタメタにシバいて・・・!」
「はっ、度量の狭い男だな。キスの一つや二つでぎゃーぎゃー喚くんじゃねーよ」
「こんのセクハラマリモが!言わせておけば・・・っ!」
「セクハラはてめぇの専売特許だろうが変態コック」
「ンだと、コノッ・・・!」

「はいはいはい、二人ともストップ」
さんが呆れた顔をして俺たちの間に入る。

「いーやっ!いくらさんの頼みと言えど、今回ばかりはこのクソ腹巻をブチのめさねェと気がすまねェ!」
「おー、上等じゃねェか。あとで吠え面かくんじゃねェぞ、ぐるぐる眉毛」

「あ〜もうっ、仕方ないなぁ!」

そう言うとさんは俺たち二人の腕を引っ張り、頬にキスをした。
一瞬目がハートになりかけたが、クソマリモの頬にも口付けるのを見て俺は絶叫した。

「ぎゃーっ!さんなんでコイツにまでっ!?」
「おい、これじゃ割に合わねーよ。どうせなら口にしろ」
「てめェは何ふざけた事言ってんだっ!」

「あー!ずりィぞ!俺にもしてくれ!」
「俺もしてほしーゾ!」

「アホかクソゴムっ!捌くぞ非常食!」

キレる俺に構わずさんはいいよ、と笑ってクソ共の頬にキスをした。

「ぎゃーーーー!!」

俺の悲鳴がこだまする中、さんはその光景を唖然と見いていたウソップの頬にも口付ける。
一瞬赤くなったウソップとチョッパーが俺の形相に気付いて震え上がった。
ルフィはにしし〜っと笑ってるし、クソマリモは「お前なんか違う生きものに変身しそうだな」と怒り狂う俺を呆れた目で見る。
誰のせいだと思ってんだよっ・・・!!


そうしている間にさんは笑って見ていたレディー達の方へと駆けていき、二人の頬にもキスを落とした。
ナミさんは驚いてちょっと赤くなりながら頬を押さえ、ロビンちゃんは楽しげに微笑んだ。

そんなクルー達に向かってさんはとびきりの笑顔を向ける。

「みんなの事、だーーい好きよっ!」

最高に綺麗な笑顔でそう叫んださんに、全員が微笑み返した。
心配をかけてしまったことへのお詫びとお礼なのかもしれない。
みんなもさんが本当の笑顔を取り戻したことを心から喜んでいた。


まぁ、今回はしょーがねーか・・・

俺は頭を掻きながら、とぼとぼとラウンジへ戻った。
するとぱたぱたと駆けてきたさんがみんなから死角になる位置で
ちゅっと俺の唇にキスを落とした。

目を丸くする俺に、頬をやや紅潮させながら
「サンジはこっちね」
とイタズラっぽく微笑んで、また走っていってしまった。



「・・・・・・・・・・・・・・・・ヤラレタ」



俺は顔を火照らせながら手で口を覆ってラウンジの入口にしゃがみ込んだ。




あーぁ、俺は多分彼女には一生敵わねェんだろーなァ・・・。
そんなことを思いながら口が緩む。

それでもいいや、彼女なら・・・。
俺のことを一生振り回してくれたらいい。
それが、俺の幸せだから。
多分これからも彼女のことで落ち込んだり、腹立てたり、泣いたり笑ったり
どうしようもなくみっともなくなったりするんだろうけど・・・。
きっとその度に、俺は彼女を好きだと自覚するんだ。

貴女が俺を想ってくれるなら、どんなことだって乗り越えてみせる。
だからどうか、俺の側にいて。
その笑顔を見せて・・・。

あきれる程の想いを噛みしめて、俺は甲板で仲間と笑う彼女を見つめた。

好きだよ、貴女が大好きだ。

夢へと進む船の上で、俺は最高の幸せを感じていた。
大切な仲間と愛しい人に囲まれて。


こちらに気づいてにっこりと微笑む彼女に俺は笑顔を返す。
夏海域の燦々と降り注ぐ太陽の日差しがクルー達を照らす。
帆に風を受けて船は真っ直ぐ前へと突き進む。
騒がしい甲板を後にして俺は昼食を作るためキッチンへと向かっていった。








                                                Fin







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 ここまでお付き合いくださってありがとうございました!
 短編の方に番外編を続々とアップさせていく予定ですので、宜しければそちらの方も是非付き合って頂ければ幸いですvv
 溢れんばかりの愛と感謝を込めて・・・
 2007.12.30 きえ
 



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