の森の満開の下−


「本当に綺麗ねぇ」
「見事だわ・・・」
「おれサクラ見れて嬉しいゾ!」
「はむはむはむむしゃむしゃむしゃ・・・っ」
「・・・本当にルフィは花より団子だな」
「まぁ夢中になっちゃうくらいサンジの料理は美味しいからね」
すわぁーーーーんっっ!」
「うるせーぞそこのメロリンコック」


見渡す限り満開の桜の下で、俺たちは花見をしていた。
島を見つけた時はあまりの美しさに誰もが言葉を無くして息を呑んだが
上陸して目の前に俺特製の花見弁当を広げ酒を酌み交わせば
いつも通り騒がしい宴会の出来上がりって訳だ。


「櫻の樹の下には死体が埋まってるっていうわね」
「えぇ〜!?しっ、死体がァ〜!?」
「本来は真っ白な花びらが、根からその血を吸い上げて薄いピンクに色づくそうよ」
「桜怖ェーーーーー!!」
「ロビンってばまたそういう怖い事を・・・」
「ん〜、んまいですね〜!」

ロビンちゃんの話でウソップとチョッパーはガタガタ奮え
ナミさんがツッコミ、ルフィはお構いなしで食い続ける。
こういう時よくさんが怖がる連中を慰めたりしてやるんだけど
当のさんに目を向けると感慨深げな表情で桜を見上げていた。

「・・・確かに、そう言われるのも分かる気がするわね」

まるで美しさに吸い込まれてしまいそうだとでも言うように呟く。

さん・・・?」
「ちょっとぉ、までそんな・・・」
「ひぇ〜!やっぱそうなのかァ〜!?」

涙目のチョッパーにさんが優しく微笑みかける。

「あ、怖がらせるつもりじゃなかったのよ。ごめんね?」
ただね・・・とさんが続ける。
「ほら、桜って怖いくらいに綺麗で、人を酔わせるような魅力があるでしょう。
 畏敬の念を抱くっていうか・・・だから桜の下には魔物が出るとか、そういう事を言いたくなる気持ちも分かるなぁって・・・」

桜を見上げながらまるで詠うように言葉を紡ぐさんはやけに神秘的で
俺は桜よりもさんに酔っちまいそうだと見惚れた。


食事を終えて各々が好きなように時間を過しはじめた頃
いつの間にかさんがいなくなっていたことに気づく。

「おい、マリモ。さん何処行ったか知らねーか?」
「あ?あァ・・・そういやさっきあっちにふらーっと歩いてったな」

歩いてったなじゃねーよクソマリモン!と未だ飲んだくれている
ゾロに悪態つきながら言われた方へと足を向けた。






はらり はらり
桜の花びらがゆるやかに降ってくる。
薄いピンクで覆われた地面を踏みしめて歩くと
なんだか本当におかしな世界へと
迷い込んでしまいそうな気がしてきた。



ひらり ひらり
花びらに誘われるように
立ち止まって空を見上げれば
目が眩むような青とピンクのコントラスト
花びらが全身に降り注ぎ
このままじゃ花に埋もれちまいそうだと
何かに急かされるように歩みを速める。





さんはどこへ行ったんだろう?
別に遠くへ行った訳でもないだろうに
なぜか不安が込み上げてくる。
まるで桜に彼女が攫われるのではないかと
怖れているみてェだ。



ようやく彼女の姿を見つけて俺は立ち尽くした。
桜の群のなかでも一際大きな幹によりかかり
彼女は目を瞑っていた。
一瞬、死んでいるのではないかと錯覚するくらい
その美しさは浮世離れしていた。


そっと近づくと小さく胸が上下しているのが分かり
俺はバカみてェに安堵する。
だけど花びらに彩られた彼女の妖艶さに魅せられて
彼女に触れることすら叶わず見つめ続けた。


あぁ、確かに今なら分かる。
桜の下には魔物が出るんだ。
人の心を惑わす妖が・・・


ふわり、と、彼女の唇に花びらが一枚落ちた。
それが合図のようにはっと我に返る。
辺りを包んでいた静謐さが音を取り戻す。
自分の考えに苦笑しながら
それをそっと指で摘んだ。


「悪いけど、花びらにだって譲る気はねェんだよ」


取ったそれを指ではじいて
彼女の唇へゆっくりと口付けた。

貴女が目覚めたら
これは桜の魔力に操られたせいだということにしよう。
そしてその体を思い切り抱きしめるんだ。
消えてしまいそうなほど
儚く美しい貴方を
この手から逃がさないように・・・












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 アンゴだかモトジロウだか・・・