paille


 −Please!−


先日俺はようやくこの溢れんばかりの想いを告げて
晴れてちゃんと恋人同士という関係になれた。
正直踊り狂わんばかりに嬉しい俺だがしかし浮かれてばかりもいられない。
俺の女神は魅力的過ぎるのだ。
一方俺はと言えば、まだまだ彼女の隣に並ぶにはおこがましい未熟者。
だから彼女に相応しい男になるべく俺はこれから日々精進するんだ!


昼食の片付けも終わりやっと俺も一息つける時間。
愛しの彼女と甘いひと時を過すべく超特急で仕事を終えたのだ。
そしていざ彼女を探しに行くと彼女は甲板でなにやらクソ剣士と談笑中。
ぶっちゃけ俺は嫉妬深い。
ぶっちゃけムカッとした。
が、しかし、俺は今までの俺ではないのだ。
哺乳類ですらないマリモに何を嫉妬する必要がある?
心優しき彼女が緑の生き物に話しかけているだけ
焼きもちなんてちゃんちゃら可笑しいぜ
HAHAHA☆
くらいの余裕をぶちかましてやるんだ!

俺の視線に気づいた彼女が笑顔で駆け寄ってきた。
「サンジ君、片付け終わったの?」
極上の笑顔。
あぁ〜〜〜〜、クソ可愛いぜ!!
心の中でメロリンしながら、表面上は涼しい顔で笑顔を返す。
「うん、だからキッチンで一緒にお茶でも・・・」

ーー!」

ウソップの声に二人で視線を向ける。
「ウソップ様の発明品完成だ!ちょっと見てくれよ!」
「はーい!サンジ君、ちょっと待っててもらっても良い?」
「もちろん」
笑って君を送り出す。別にちょっと楽しい時間が先延ばしになるだけ。
それぐらいでカリカリしたりなんてしないさ。
ただ今晩の夕食がきのこ尽くしになるのは否めないが・・・。

とりあえずお茶の準備をするため、キッチンへ戻る。
やかんを火にかけ、ちゃんの好きな茶葉を棚から取り出す。
すると外で我が船の船長の声が。
ー!見てくれ!でっけぇ魚!!」
「うん、今行くー!」
やれやれ。まぁ分かっているんだ。
俺が虜になった君の魅力に、他の奴らだって惹かれない訳はないって事。
そしてそんな想いを無下に出来ない君の優しさも。
そんな所も含めて君を愛してしまったのだから。
大人になるんだ俺。
・・・しかし今後一週間食卓に肉は出ないと思えよクソゴム。

ティーポットとカップを暖めていると息を切らした君が入ってきた。
「ごめんね!お待たせ!」
俺のために急いできてくれる君が愛おしい。
「いやいや、全然問題な・・・」
ー!!」
・・・冷静に、冷静になるんだ俺。

キッチンに駆け込んできたチョッパーに青筋立てそうになるのを堪える。
「今作ってる薬のことでちょっと相談したいんだ」
「そうなんだ、えっと・・・」
ちらりとこちらに視線を向けた彼女ににっこり笑ってみせる。
頭の中ではトナカイ料理のレシピを十品くらい考えつつ・・・。

「俺の事は気にしなくていいから」
「うん・・・じゃあちょっと・・・」
ー!!鬼ごっこしようぜ!!」
「いや、その前に俺様の冒険話の続きだ!」
ー」
次から次へとなだれ込んでくる野郎共に俺はついに痺れを切らした。

「てめぇら、うるっ・・・!!」
うるせえ!!と怒鳴ってやろうと扉を見ると、最後に入ってきたのは麗しの航海士ナミさんだった。

「うる、うる〜・・・んだ瞳が今日も美しいですねナミさんっ!」

レディ至上主義の俺にナミさんを責められようはずもない。
最初の怒鳴り声にびっくりしていたナミさんだったが、
俺の言葉を「はいはい、どーも」といつも通りあしらうとちゃんに向き直った。
この後通る海域のことで相談したいらしい。
美しい上に聡明なちゃんはレディ達にも引っ張りだこなのだ。


他の奴らも出て行って静かになったキッチンで俺は深いため息をつく。
こんな事で一々苛立っているようじゃ駄目だ。
もっと度量のでかい男にならなくては・・・。
結局紅茶はレディ達全員に振舞うことにして
トレーに乗せるとナミさんとちゃんがいるであろうパラソルの方へ向かった。
しかし、そこには日誌をつけているナミさんの姿しかなく・・・

「ナミさん、あの、ちゃんは?」
ならロビンが借りてた本について聞きたいことがあるとかいって、女部屋に呼ばれていったわよ?」
「そう・・・なんですか」
「サンジ君なんだか顔色悪いわね?」
ナミさんの気遣いにも乾いた笑しか返せない。


やっと戻ってきた彼女を見つけて思わず安堵する。
これでようやく待ちに待った二人の時間を・・・

ー!絵本読んでくれー!」

 ―――・・・・・・・・

「何言ってんだチョッパー、は俺と鬼ごっこするんだぞ!?」

 ―――冷静に冷静に・・・

「ばーか、俺の冒険話を聞くのが先だ!」

 ―――器のデカイ男に・・・

、ちょっと鍛錬に付き合え」

 ―――・・・・・・・・




・・・・・・ぶちっ




「もうやってられっかぁぁぁあああ!!!」

俺の叫び声に甲板が静まり返りクルー達は硬直する。
スタスタとちゃんの前に行くと、驚いて呆けているのもお構いなしに彼女を肩に担ぎ上げた。
小さく声を上げた彼女を無言のまま倉庫へ連れ去る。

大人気ねえ?構うもんか。
冷静に?知らねぇよそんなモン!
そんなことしてたら彼女との時間なんて永遠に手に入れられねえじゃねえか。
ガキで結構!
俺は嫉妬深くて情けなくて度量の小さいクソガキさ!


「サンジ君・・・?」
彼女を降ろして倉庫の扉をしめる。
不安げに俺を見つめる君。
そりゃそうだよ、いきなりこんなとこ連れてこられて訳わかんねぇよな。
半ば開き直り状態でやさぐれている俺に、ちゃんがそっと手を伸ばした。

「怒ったの?不安になった?」

優しく頬に触れられて俺はなんとも胸が苦しくなる。


あぁ・・・なんでこうなんだ


さっきまで噛み付いてやりたいくらい凶暴な気持ちだったのに
君の温かさを感じただけで、そんなの一瞬にして消えちまう。
壁の隙間から差し込む光に照らされる君はいっそ神々しいほどで
なんだか神聖な気持ちになってしまう俺は本当に君にイカレているんだと今更ながらに自覚する。
そんな心配そうな顔しないでよ。
欲しい玩具が手に入らなくて駄々こねてるガキと一緒なんだから。
クソ情けねえ・・・。
だけど、それでも、どうしたって君を手放すなんて出来ないから。

俺はゆっくりと彼女に笑って見せる。
多分眉毛はへにょっと下がってるんだろうし、クソ情けねえ面してんだろうけど
こんなんじゃカッコつかねえって分かってんだけど
その手をとって方膝を床につけた

「どうか、俺に貴方の時間をいただけませんか、愛しい人?」

視線を合わせたままそっとその甲に口付ける。
驚く彼女。しかしすぐに溢れんばかりの笑顔くれた。

「もちろん喜んで」

あぁ・・・気持ちが満たされる。
抱きついてきてくれた君を強く抱きしめ返して。
俺はまだまだ君には不釣合いかもしれないけれど
君を愛する気持ちだけは誰にも負けないから
きっと素敵な君に追いついてみせる。
だから、どうか、俺の側に・・・。




 ◇◇◇◇◇




「・・・サンジ怖え〜!!!」
「目完全に据わってたぞ・・・」
「なぁオヤツは〜?」
「バカ!お前今行ったら確実に殺されるぞ!」
「サンジ君よっぽど溜まってたのね・・・」
「けっ、色ボケコックが」

オヤツ無しが応えた船長と、ぶち切れたコックに恐れをなしたクルーが
二人の時間を邪魔しなくなるのは、また別のお話。





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 超初期の作品。なんかむずむずする・・・