君の声で 君のすべてで・・・
暗闇の中、振動と共に光るディスプレイには愛しい君の名前。
もそもそと伸ばした手は途端に俊敏になり
咳払いをひとつしてから通話ボタンを押して耳元に当てる。
「・・・サンジ?」
一拍おいてから呼ばれる名前につい頬が緩む。
返事をすれば少し声に焦りの色が混じって
「ごめん、寝てた?」
なんて切ろうとするから、いや起きてたよって笑って嘘を吐いた。
人一倍気遣い屋の君への答えは慎重に選ばなくちゃ。
せっかくの嬉しい時間を終わらせない為に俺は欠伸を噛み殺す。
もっとワガママになってくれりゃあいいのに・・・とは思うけど
こうして電話を掛けてくれるようになっただけでも大進歩だ。
受話器の向こう側で少しくぐもった声は毛布に包まって話しているせいだろうか。
目を瞑って耳をすませれば、君がすぐそばにいるような感覚に陥る。
物が少ないあの部屋で携帯を耳に当てる君を想像する。
なんだか君のまわりの空気まで感じられそうで恋しさが募った。
柔らかな音色を紡ぐような話し方はどんな高尚な音楽よりも俺を幸せにする。
淡い声を決して聞き逃すまいと真剣になる自分がなんだかバカみたいで笑えた。
だけどそのひと言ひと言が宝物のように思えて、やっぱり俺は必死で耳を傾ける。
言葉少なな君が言葉を途切れさせないように相槌を入れつつ話を促す。
なんでもいい。全く意味のない言葉だっていいから、とにかく話していて欲しい。
体の奥に沁み込んでいく声をもっともっとと心の中でねだる。
あぁ、でも俺はやっぱり欲張りだから。
声を聴くと今度はその体温が欲しくなっちまう。
愛おしい音色が受話器越しであることがもどかしくて仕方がない。
参ったなぁ。クソ会いてェ。
けど時計の針がそれは無理だと俺に告げる。
会えない乾きを癒すかのようにいっそうその声に集中した。
ふいに間があって。
「会いたいな・・・」
一瞬耳を疑って聞き返すと、慌てたように何でもないと。
けどじわじわ俺に浸透してきたそのひと言に口元が緩むのを抑えられない。
必死で話題を変えようとする君が可愛くて笑いそうになるのを堪える。
ごめん。しっかり聞こえちゃったよ。
同じ気持ちでいてくれたのかと分かった俺はもう無敵だな。
悪いけど止められそうも無い。
明日はきっと寝不足。けどそれも幸せさ。
通話を切った俺は財布と車のキーを持って玄関へと向かう。
さぁて君の家に着くまでに考えなくちゃ。
気遣い屋の君に気を使わせない訪問の口実を。
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大好きなSURFACEよりv