paille


擁−


愛しい人をこの胸に抱きしめる。
その温かさ、柔らかさを感じて、腕に力をこめると
俺の背中に回された細い腕にも同じように力がこもった。

「なーんか、すっごい幸せ・・・」

腕の中からくぐもった声が聞こえる。

「すごいな・・・好きな人に抱きしめてもらうのって、こんなに満たされた気持ちになるんだねぇ」

愛しい声が紡ぐ言葉に俺もいっそう満たされ頬を緩める。

「なんか・・・ちょっと感動する・・・」

大仰な言葉なようだけど笑うことなんて出来なかった。
俺もそう感じていたから。

「へへ、こんなにいいものならもっと早くやれば良かったね。そしたらもっといっぱいできたのに」
「でもそれじゃあ順番が違っちまうよ」
「ふふふ、そっか。でも、気持ち伝えるまでいっぱい悩んだり苦しくなったりしたけど
 それがあったおかげで今こんなに幸せなんだと思うから、遠回りしたことも後悔してないよ」

素直な彼女の言葉に胸が締め付けられて、さらにきつく抱きしめた。

「やばいな・・・クソ幸せすぎる」

あんなに想い続けた人がこの腕の中にいるなんて、本当に夢みたいだ。
でも、ここに辿り着くまでには本当に色々なことがあって、その日々がこれは現実なんだと実感させてくれた。



ただ・・・確かにこれも気持ちいいけれど、そろそろ次のことがしたくなってきた。
それを実行すべく少し距離をとって頬に触れ、顔を近づけようとしたら手でぐっと押し返された。

「・・・もしもし?」
「だめ。今はもうちょっとこっちを堪能するの」

そう言って再び体に抱きつかれた。だめって・・・そんなぁ・・・
こういうのへびの生殺しっていうと思うんですけど・・・

「さっきはもっと早くやっとけば良かったって言ってたのに」
「それとこれとは別。今は次に進む前の時間を堪能したいの。進んでしまった後とはちょっと違うでしょう?」

いや、でもさんざん抱きつかれて体もそろそろ盛りあがってきてますし
正直我慢の限界というか・・・

ちゅわーん・・・」
「だめー。ほら、もっとぎゅっとして?」

可愛いおねだりに降参して、お姫さまの仰せのとおりぎゅっと抱きしめた。
うーん、幸せだけどクソ辛ェな。

「プリンセス、そろそろちゅーとか色々したいんですけど」
「まぁっ、なんてあからさまな物言い。紳士らしくないんじゃない?」
「紳士も男ですからねぇ」
「あらま、注文したものと違うわ」
「注文て・・・まぁ紳士だと思っていたら狼でしたなんて良くある話かもね」
「・・・返品するよ?」
「うそです!ごめんなさい!」

冗談だけどってクスクス笑うちゃんに白旗をあげる。
冗談でもそんな怖いこと言わないでよ。俺泣いちゃうぜ?

本当は無理やり奪っちまうことも出来るけど、幸せそうに抱きしめられている彼女を見ていると無理強いなんてしたくないし。
しょうがねェ、こうなったら愛しい人の気が済むまでとことん付き合いますか。

俺の気も知らずに幸せそうな顔で笑う君がなんだかズルくて
腹いせにぎゅーーーーって一番力をこめたら、くるしいくるしいって腕の中で笑った。


くそぅ、あとでいっぱいちゅーしてやる。
愛おしいわがままに翻弄されながら、俺は翻弄し返すすべを画策し始めていた。






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 ハグが一番好きv