rainy blue −



ザーッと地面を叩く微かな水音に気づいて私は目を覚ました。
緩慢な動作で手を伸ばしカーテンを捲る。
すると重そうな雲から結構な量の雨が降っているのが見えて、一気に気が滅入った。
軽く起こした頭を再びどさりと枕に沈めて喉の奥で唸る。

あー最悪。なんで雨降ってんのよ。
天気予報じゃそんなこと言ってなかったのに。あーもう、ほんっと当てになんないなぁ。
窓の外から引っ切り無しに聞こえてくる雨の音に苛々が増す。
雨は好きじゃない。降ってるだけでブルーな気持ちになるし。

ため息を吐いて体を起こそうとすると、下半身に鈍い痛みが走った。
思わず顔を顰める。それでもなんとか腕の力で半身を起こして壁に寄りかかった。
体がダルくて重くて動かすのも億劫だ。

ふいに横から怪獣のような鼾が聞こえて、反射的にそちらを睨む。
そこにいるのは燃えるような真っ赤な髪をシーツに散らし、無精ひげを生やした酒臭い男。
気持ちよさそうにぐおー、と高鼾をかくシャンクスに軽く殺意を覚えた。
こっちはアンタのせいで腰痛くなってるっつーのに!
ったくいい年こいてなんであんなに元気なんだか。
少しは翌日の私の体の負担を思いやって欲しいもんだわ。

腹が立って鼻を摘んでやると、ふがッと変な音を立てて鼾を止めた。
うーん、と寝たまま煩そうに私の手を退かす。
こちらの方に寝返りをうったシャンクスの横で膝を抱えて体育座り。
横顔にぱさりとかかった赤い髪を梳いてかきあげると再びすやすやと気持ちよさそうな寝息を立てた。
もういい年なのに子供みたいな寝顔。
膝の上に頭をのせてそんなシャンクスの寝顔を見下ろしながらも一度ため息。

今日は一緒に出掛けるつもりだったのになぁ・・・
そんでシャンクスの財布カラになるくらいしこたま物買ってもらおうと思ってたのに。
そんな目論見がパーだわ。
久々にデート出来ると思って楽しみにしてたのに。
ようやく休みが合って会えたのに。なんでよりによって雨なの?

剥れながら窓の外をねめつける。
別に雨だからって外に出らんない訳じゃないけど。
でも出る気は思い切り失せる。
ただでさえダルイ体が一層重く感じる。
ああ憂鬱。


立てた膝に顔を突っ伏していたら隣からうーんと唸る声が聞こえた。
起きたかなと思って見れば何やらごにょごにょと言葉にならない声を発している。
それにちょっとよろしくない感興をそそられた。

他の女の名前とか呼んだりして・・・

よく言うよね、寝てるときに話しかけると嘘がつけなくて浮気が発覚しちゃうとか。
朝の奥様方が見てるような番組とかでさ。なんかドロドロした感じの。
ほんとに呼んだらヤだなと思いつつ、ちょっとドキドキしながら寝顔を見守る。
相変わらずごにょごにょ言ってるシャンクスに、いっそ話しかけちゃえなんて心の悪魔が囁きかける。
もし他の女の名前なんて呼んだらベッドから蹴り落としてやろうかなんて考えていると
ふいにシャンクスが腕を伸ばして枕を引き寄せた。


「ん〜・・・〜・・・」



そう言って枕を抱きしめながら、シャンクスはふにゃ〜っと相好を崩す。


・・・・・・・・・・・・・・・・なんっつーだらしない顔。


思わず呆気にとられ、呆れて言葉を無くし、やがて私は吹き出した。

あーあ、きりっとしてりゃあ誰よりも格好いいのに。
威厳があって近寄りがたくて大物って感じの風格なのに、それが今は見る影も無い。
くつくつと笑って、けどそんなことを思う私だって今やもう十二分にニヤけていた。
幸せそうな寝顔も痛む腰ももう恨めしくはない。

もう一度窓の外に目を向けてから、私は再び布団にもぐり込むことを決めた。
シャンクスが抱きしめている枕を奪い、もそもそと寄り添う。
そして私専用枕という名の右腕の付け根に頭をのせる。
はじめはあまり寝心地がいいとは思えなかったそこが、今ではどんな枕よりも私の頭に馴染む。
寝ぼけたまま私を抱き寄せるシャンクスにますます顔を綻ばせ、心地良くまどろんで。
まあたまにはこんな過ごし方も悪くないよね、と逞しい体に腕を回した


窓の外から聞こえる憂鬱なはずの雨音が今は不思議と優しく聞こえた。















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 むちゃくちゃ格好いいのベースはダメなオッサンだったら可愛いなぁっていう・・・妄想(だいた)