「じゃあ俺がお前ェをおぶって・・・」
「やだよ、おんぶって後ろから見るとすごい間抜けな格好なんだもん」
「じゃあこーやって横抱きに抱えんのはどうだ?」
「往来をお姫さま抱っこで歩くの!?ナイナイナイ、何そのハーレクインごっこ」
「いちいち煩ェなァ。じゃあ正面からてめェが抱きつきゃいいだろ」
「・・・あたしゃコアラか」
「そんじゃ俺ァユウカリか?」
軒下で一本の傘を手に私とフランキーはああでもないこうでもないと騒いでいた。
外は雨。それも結構強めの。そして傘は一本。
ならば相合傘すれば良い話、とそう簡単に済む話ならば問題はないのだが。
私たちは一つの壁にぶち当たった。それは身長差。
私は平均より少し小さめ。対してフランキーは規格外のデカさ。
当然大きい方に傘の高さを合わせるわけだけど、今日は生憎横殴りの雨。
そんな差し方をしても私にはなんの効力もない。目的地である船に着く頃には全身びっちょりだろう。
身長差がありすぎて二人で差そうとするとものすごく斜めってしまう。俺は濡れても良いからお前が使えよなんて優しいことを言ってもらったけれど、
そんなこと言われたらこちらだっていえいえそちらこそと言いたくなるのが人情ってもんだ。
大体フランキーは半サイボーグ人間だしあんまり濡れるのとか良くない気がすんだよね・・・なんか錆びそう。互いに譲らずに・・・じゃなくて譲り合いまくって話は平行線。
ならばどこかに妥協点を見いだそうということになった。
まぁこんなひどい雨じゃあ体が濡れてしまうのはもう避けようがない。
けれど人間ってもんは顔さえ濡れなければ不思議と不快感は軽減されるものだ。
ならばどうにか二人の頭から上を濡らさずに済む方法をと案を出しあっているのだけれど・・・
「いや出しあっているのだけれどって、案出してんのは俺でお前ェはいちゃもん付けて却下しまくってるだけだろうが」
「ちょっと、人のモノローグ勝手に読むの止めてくれない?」
「全部口に出してんのはお前ェだろうが」あれ?出てましたか。そりゃ失敬。
そんなこんな言ってる間に止まないかななんて思っていたけれど、雨は勢いを増すばかり。
どうしたもんかと一本しかない傘を眺めて唸っていると。
「あーもーめんどくせェなァ」
悪態が耳に届いたとほぼ同時に私の視点が上がった。
ひゃッ!?と悲鳴を上げる私に構わず広げた傘を私に持たせてフランキーはずんずんと歩き出した。
「ぎゃー!なにコレ!?めちゃめちゃ高いんだけど!?っていうか、え!?お姫様抱っこ!!?」
「うるせェな、耳元でぎゃーぎゃー騒ぐな」
「いやいやいやいや、ナイから!これはナイ!ちょ、ほんと下ろして!?怖いほんとに怖い高くて怖いってば!」
「いいから黙って傘持っとけ。お前ェがちゃんと差さねェと俺も濡れるんだぞ」
「なんでよりにもよって姫だっこなの!?これだったらおんぶの方がまだマシだよ!」
「後ろから見た格好が間抜けだからヤだってさっきお前ェが言ったんじゃねェか」
「前言撤回します!すいませんでしたワガママ言って!」
「もう遅ェよ、観念しやがれ」
「何悪役みたいなセリフ吐いてんの!?っていうかほんとに下−ろーしーて〜っ!!」
ぎゃーぎゃー騒いでいた私はふいに視線を感じて押し黙った。
恐る恐る周りを見渡せばすれ違う人がみんなこっちを見ている。
そりゃそうだよね!海パン一丁の長身サイボーグがお姫様抱っこして往来闊歩してりゃあそりゃ見るっつーんだよね!
完全にさらし者じゃん!無理無理無理!ほんっと無理だってば!「恥ずかしいよフランキー!本気で恥ずかしいって!サンジ君風に言えばクソ恥ずかしい!!」
「だったら傘に隠れときゃあ良いだろ」
「あ、そっか・・・って傘透明なんですけどッ!?」
「雨粒付いてンなに見えてねェって」嘘つけ!みんなガン見してるっつーんだよ!めちゃめちゃ目ェ合うっつーんだよ!
っていうかさ、目立ってんのももちろん恥ずかしいだけど・・・それ以上に・・・
フランキーの顔が、めちゃめちゃ近いんですけど・・・!?
「ほら、ちゃんと落っこちねェよーに首につかまってろ」
そのセリフに内心でぎゃーッ!と絶叫しつつ、恐る恐るがっちりとした首に腕をまわす。
一層縮まった距離に顔が沸騰しそうだ。鉄で出来た鼻の付け根までよく見えちゃう近さ。
サングラスの奥の目まで見えちゃうくらいの近さ。
互いの呼吸まで感じてしまうほどの・・・ひ〜ッ!恥ずかしい!限界!!「・・・っか、顔から火が出そうだよフランキー!」
「口からなら火ィ吹けるぞ?」
「いやそんな超人技自慢じゃなくて!例えだから!言葉のあやだから!」やいやい言いながらもフランキーはずんずん進んでいく。
いつもより高い視界を満喫する余裕など微塵もなく、私はただ只管にしっかりと傘を持ち
顔をこれでもかと赤くしながらやり場の無い視線をさ迷わせていた。黙ってしまうとますます羞恥は増すのに、何故だか急に言葉が見当たらなくなってしまって。
恥ずかしくて恥ずかしくてもう死にそう、なのに・・・
・・・私はなぜだか小雨になったことに気づいてもそれを口に出来ないでいた。
もういいよって、これくらいなら傘なくても歩けるよって言えばいいのに。
どうしてどうしてと自問自答しているうちに、いつの間にやらサニー号の姿が見えて。愛らしいフィガーヘッドと目が合い、なんだか微笑まれている気がした私は居た堪れずに俯いた。
新型相合傘のススメ
(・・・ねぇ、もう雨止んでるの知ってた?)(いいから気付かねェふりしてろ)(・・・・・・・・・はい)
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ナイスハレンチ?