−恋文−
「・・・・・・・・・・・」
「〜〜〜〜〜っ!」
「・・・・・・・・パウリー。一体なんなのよ?」
なんで出社早々、立ちはだかられて無言で威圧されにゃならんのだ・・・。
「なっ、なんでもねェ!!!」
一目散に走っていくパウリーを見送りながら、どこがなんでもないんだと溜息を吐く。
ここのところ、いつもこうだ。何かを言いたげに私の所に来ては、結局何も言わずに全力で走っていく。
会えるのは嬉しいんだけど、いつもいつもこれじゃあさすがに疲れてくる。
前はもう少し会話になってたと思うんだけどなぁ?
再び溜息を吐くと、仕事場であるガレーラの事務室へと向かって行った。
「あぁーーー!!くそっ!またやっちまった!!!」
今日こそはって思ってたのにっ・・・!
に対する気持ちを自覚したのは大分前の事だ。
もう心底惚れちまってるし、いい加減はっきりさせちまいてェ。
そう思い立ち、ここは男らしくバシッと言っちまおう!と、決意したものの・・・
「アイツの顔見ちまうと、言葉が出てこねェんだよなァ・・・」
―――あれじゃあまるで、ケンカ売ってるみたいじゃねェか・・・
『っていうより、カツアゲでもしてるのかと思ったッポ!』
「お前さんのトコに来る借金取りと、大して変わらんわい」
「セクハラね」
「お前ェら・・・!どこで見てやがった!!」
「ンマー、いい加減はっきり言ったらどうだ」
「アイスバーグさんまでっ!?い、いや、分かってはいるんですけど・・・本人目の前にすると・・・」
『根性ナシだッポー!』
「うるせェ!っつーか告白なんてハレンチな真似出来るかっ!!」
「・・・逆切れじゃわい」
「ンマー、直接言うのが難しいンなら、手紙でも書いたらどうだ?」
「手紙・・・?」
「ラブレターじゃな」
「ラッ!?ラブッ・・・・・・!!」
「レターセットご用意しました」
「ンマー!さすがだなカリファ!!」
「いや、まだ俺書くなんて一言も・・・!!」
「しかし、いい加減はっきりしてやらんとが可哀想じゃわい。毎度毎度、あぁ嫌がらせのように睨まれては」
「うっ・・・。でも、そんなの書いたことねェしよぉ・・・」
『頭の足りないお前に代わって、俺達が考えてやるッポ』
「ほ、ほんとか!?」
「うぉぉおおお!なんか面白そうなことやってンなぁぁあああ!!!」
「なんだ、ついに告る気になったのか?」
「っ!!集まってくンな!見せもんじゃねーぞ!!」
「まぁまぁ、人が多ければ良いアイディアも集まるじゃろ」
「〜〜〜〜〜〜!!」
『いいから早く書くッポー!』
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
また無言の威圧。だけど今回は、今までとちょっと違った。
「・・・これは?」
「・・・手紙」
それは見れば分かる。だけど、その装飾が問題で・・・
シンプルな白地の封筒。でもそれに封をしているのは、この男からは到底連想できない赤いハート型のシール。
・・・ギャグかな?
だけど、茹蛸のようになっている様子からすると、そういう訳でもなさそうだし・・・。
この、これでもか!と言わんばかりの封筒は・・・
「これって、ラブレ・・・」
「あああああああああああああああっ!!!」
私の言葉をかき消すように大声を上げるパウリーにびくっとする。
なんなのよっ・・・!
「い、いいから、早く受取れっ」
恐る恐る突き出されたそれを手に取ると、その瞬間またも逃走しようとするパウリーの上着をぐっと掴んだ。
「!!?」
「読むから、ここにいて」
「・・・・・・・・・」
パウリーはしぶしぶといった感じで、私に背を向け、その場にどかりと座った。
全く、ピンポンダッシュじゃないんだから・・・と思いながら封を開ける。
だって本当に悪戯だったらすぐ殴れるようにしとかないと。
中には便箋が一枚。
殴り書きしたような汚い字が並んでいた。
「へ
俺はお前に惚れてるぞ!!うおおおおおおおおおお!!!
わしはお前さんのことが、W7の噴水の天辺から飛び降りたくなるくらい、愛しゅうてならんのじゃよ。
借金だらけの俺でよかったら、一緒に返済していってほしいッポー。
死ぬまで俺の寝癖を直してほしい。
交際を始めたら毎日長袖着る羽目になるけれど、それでも良ければ付き合ってくれないかしら?
ンマー俺と結婚すりゃファーストレディーだが、どうだ?
・・・・・ 」
「・・・パウリー。これは・・・ラブレター、なのかしら?」
「お、おお!」
良かった、社をあげたイジメかと思った。
しかし、それにしても…
どこからツッコんだら良いのかしら?
まぁ根本的なとこで、せめて文体揃えなさいよとか
叫び声や鳩の泣き声は書かなくて良いでしょうがとか
カクならあれ位の高さ飛ぶくらいどおって事ないじゃない?それとも暗にパウリーに飛び降りて死ねってことかしら、とか
ルッチのは完全に嫌がらせでしかないな、でも確かに借金抱えた男は厄介ねとか
ルルの寝癖なんて直したら、私の体からにゅっと生えてきそうでイヤだわとか
カリファは毎日ハレンチハレンチ言われて腹立ってンのかな?とか
アイスバーグさん、完全に趣旨間違えてますとか・・・
色々言いたい事はあるんだけれど
やっぱり一番気になるのは最後の一文で
「…ね、この最後の『多分』って何?」
「うっ…あーそれは、なんか、勢いで…」
せめてこれが無ければ、もう少し素直に喜べたのになぁ。
震えるような汚い字で、小さく小さく本当に小さく書かれた三文字は、間違いなくパウリーのものだった。
けれどその後にえらく力強い字で打ち消すように『多分』と付け加えられているから、やっぱりからかっている様にしか見えない。
「じゃあその前の言葉もただの勢い?」
「いや!それは…本心だ」
・・・バカだなぁ。こんな遠回りな事しなくたって、この一言を告げてくれたら
私はすぐにパウリーのものになったのに。
でもバカなのはお互い様か。こんな嫌がらせ紛いのラブレターが、卒倒しそうな程赤くなってるガラの悪い凶悪面が
ロマンのかけらも無いこのシチュエーションが、こんなに嬉しいんだもの。私だって十分バカだ。
これじゃあ完全にさらし者だっていうのに。
でもいいや。どう考えても嫌がらせでしかないみんなの文章にも気づけないくらい
きっといっぱいいっぱい緊張して書いてくれたんでしょう?
それくらい私のこと想ってくれたんだよね?
「パウリー」
「・・・読んだか」
「うん・・・」
「・・・・・・・・」
「ありがとう。嬉しい」
「・・・そうか」
「でも、やっぱりちゃんと聞きたいな」
「・・・・・・・・」
「ひと言で良いから」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・言い損なら言わねェぞ」
「ふふっ、多分大丈夫よ」
パウリーが意を決したように立ち上がって、私に向き直り、深呼吸をした。
「あ、今度は『多分』て付けないでね?」
「分ァってるよ!一回しか言わねぇからちゃんと聞いとけ!!」
なんでアンタがそんなに偉そうなのよ。
そう思ったけど。パウリーが口にした三文字は、やっぱり手紙の文字のように小さくて
すごく無骨で、むちゃくちゃ不器用で、そして、優しかったから。
それを読んだ時と同じように、この胸を熱くさせた。
「私も・・・パウリーが、好きよ」
―――あなたが無言の嫌がらせを始めるずっと前から・・・
「なんじゃ!くっついてしもーたわいっ」
『チッ、は趣味が悪いッポー』
「どうしてあんなセクハラの手紙で付き合おうと思ったのかしら?」
「・・・お前ら本当に邪魔する気だったろ」
「ンマー俺の嫁にはならねーのか」
「アイスバーグさん!!本気だったんですかぁぁあああ!!!?」
―――やけに豪華なメンバーに一部始終を出歯亀されていたことを知り
やっぱりさらし者だと頭を抱えるのはもう少し先の話。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『好きだ・・・多分!』