ドックの中心でを・・・


は最近悪質なイジメに悩んでいた。相手は名高いガレーラカンパニーの職長パウリー。
同じ空間にいればあからさまにガン飛ばしてきたり、話し掛けようとすれば脱兎のごとく逃げられたり
鉢合わせればまるでおばけに遭遇したかのように絶叫されたり、他の職長達と会話すれば相手を連れ去って行ったり・・・・


「どう思うアレ!」
「うーむ、確かに行き過ぎておるのう」
「でしょう!?こんなネチネチネチネチ・・・小姑かっつの!嫌いなら嫌いってはっきり言えばいいのに!」
「いや、あれは嫌いというよりむしろ・・・と、噂をすればなんとや・・・って、ぅわわわわッ!何するんじゃパウリー!?」

顔から湯気を出したパウリーがカクの腕を取りダッシュで連れ去っていった。
またか・・・とは額に青筋を立てる。そろそろ堪忍袋の緒も限界に近づいていた。


そして一方のパウリーはといえば・・・

「パウリー、お前さん分かりづらいにもほどがあるわい。好いた女が他の男といて嫉妬する気持ちも分からんでもないが
 ワシらじゃって仕事でと話さんといけんこともある訳じゃし、いい加減にしてもらわんと」
「わ、わぁってんだよそんなことぐれェ!けど体が勝手に・・・!」
、お前さんに嫌われとると思っておるぞ?」
「はァッ!?なんで!!」
「あんな態度じゃ当然じゃろうが」
「・・・・・・・・・・・・・」
「全く進展せんのう。ああいう時はいっそのこと『は俺のもんだ!』とか言ってみたらどうじゃ?」
「んなハレンチなこと言えっか!!」





そんな会話が繰り広げられているとも知らず、はイライラをぶつけるかのように仕事に勤しんでいた。
殺気立ちながら鉋をかけるに周囲の船大工達は後ずさる。
しかしそんなことなど一向に意に介さない男が一人。

、そんなに怒るなッポー?』
「・・・ルッチ、ハットリ・・・。だって、だってバカウリーがムカつくんだもんっ!!!」
『あんなバカのせいでお前が眉間に皴を作ることなんかないポッポー』
「うん・・・そうだよね!あんなバカ!」
『そうだッポー、あんな馬鹿』


まさか自分の罵倒大会が始まっているなど思いもせず、への態度を反省していたパウリーが通りかかった。
改めようと誓ったばかりなのに、とルッチのツーショットが目に飛び込んできた瞬間ついいつもの衝動が沸き起こってしまう。


「私まさかこんな気のいい職場でイジメにあうなんて思ってもなかったよ!」
『たとえどんなにあのバカがを阻害しようとも、俺達はの味方だクルッポー』
「ルッチ・・・ハットリ・・・っっありがとぉー!!」

傷心していた所に優しい言葉をかけられて、嬉しさのあまりはルッチに抱きついた。
その衝撃映像にパウリーの箍が外れる。


「触んなーーーーーーー!!」


突然の大声に驚いたように顔を上げた二人は、パウリーの手によって引っ剥がされた。

パウリーがルッチをギロリと睨みつけると、ルッチはにやりと口端を上げて見せた。
ルッチがパウリーの気持ちに気づかないはずなどなく、それを知った上でに構っていたのだった。
パウリーの方もそんなルッチの企みを感づいており、最近異様ににちょっかいをかけるルッチを憎々しく思っていた。

「ちょっと!毎回毎回なんなのよパウリー!?私に恨みでもあんの!?」

そんなことなど気づきもしない鈍感なはパウリーに詰め寄る。
その鈍感さに身勝手な苛立ちを覚えつつ、ふいに至近距離になってしまったことでパウリーのボルテージは一気に跳ね上がる。
さっきのカクとの会話が頭を過ぎったことでそれはさらに加速し、パウリーの頭はオーバーヒートした。



―――もうっ・・・この際言ってしまえっ・・・!!
ルッチにに触るなと、は俺のもんだと・・・ルッチ、は俺のだ・・・!

冷静さを欠いて暴走したまま、パウリーは思いきり息を吸い込んだ。













「ルッチは俺のだぁぁぁぁぁあぁぁッ!!!」










ガッシャーーーンッ!!ドッカーーーンッ!!

ドック全体に響き渡る大声に、各方面からあきらかに動揺した為と思われる様々な爆音とどよめきが走った。
しかし自分のセリフに間違いがあった事に未だ気づいていないパウリーはふーッふーッと息を切らしており
そんなパウリーを前に当事者二人は固まっていた。


そして全てを知り傍観を決め込んでいる人間がひとり・・・

―――ぱ、パウリーの阿呆!コントのようにズッコけてしもうたではないかッ!
    それにしてもあのルッチの顔・・・!!クッ・・・いかん、面白すぎるッ!
    あやつのポーカーフェイスが崩れた所などはじめて見たわい・・・ッ!・・・・・ッ!!
    ぶはっ!!パウリーめっ、ワシを笑い殺す気か!!


そんな腹を捩じらせて笑い転げているカクを他所に、三人はフリーズしたままだった。
しかし徐々に解凍し始めると、はふるふると震えだした。

「あぁそう・・・よーく分かったわ。ようはアンタの大事な職長たちに私が近づくのが気に入らなかったって訳ね・・・」
「・・・・・・・・・・あ?」
「悪かったわね!もう二度と近づかないわよ!勝手に男同士でいちゃついてろッ!このホモ野郎ーーー!!」


走り去るをぽかんと見送るパウリー。
そして自分のセリフとの吐き捨てていった言葉を反芻して、みるみる青ざめていく。



「っち、違ッ・・!違う!誤解だっ!そうじゃなくて・・・ッ!」
『近寄るんじゃないッポーーーーーー!!』
必死に弁解するパウリーが近づくと、ルッチは怯えるように後ずさった。

「そうじゃねェんだってばぁーーーーー!!」

パウリーの悲痛な叫びは再びドック中に響き渡った。









W7の端まで走り去ったは海を見ながら蹲っていた。

―――バカパウリー!本当はちょっとだけ私に気があるのかなとか期待してたんだからね!
なのに・・・なのにルッチに告白ってどういうことよぉ!パウリーのアホーーー!


涙目をごしごし擦っていると、ざっ、と足音が側で止まったことに気づいた。
顔を上げれば見慣れた青いつなぎにゴーグルをのせた金髪頭。


「・・・邪魔者女に何の用?鳩のせたダーリンのとこに居りゃ良いじゃないよ」
「違う!あれは言い間違えたんだ!!ほんとはっ・・・ほん・・とは・・・・っ」

真っ赤になってうな垂れるパウリーに消し去ったはずの期待が蘇る。

「そんなこと言われると期待するんですけど?」
「・・・・・・しろ。してくれねェと困る・・・」
「・・・ちゃんと言ってよ」
「〜〜〜ッ無理だ!これが限界だ!」
「ルッチには言ったくせに」
「ありゃ事故だ!!」

茹だこ状態のパウリーに堪らず笑みが込み上げた。

「しょーがないなァ、それで勘弁してやるかっ」
「悪かったなっ!」
「もー、怒らない怒らない」
「怒ってねェ!」
「照れない照れない」
「照れてねェ!」
「好きって言って?」
「好・・・っ〜〜〜〜ッ!」

赤面して怒鳴るパウリーには腹を抱えて笑った。

「残念っ、引っ掛かんなかったかぁ」
「お前なァ・・・」
「あーぁ、せっかく出来た彼氏なのにしばらくは男好きって噂で持ちきりなんだろうなぁ」
「だーから誤解だって!」
「でも普段散々女の子にハレンチだのなんだのって叫んでるから女嫌いって噂も出てたし、信憑性高いよねぇ」
「・・・くっそ・・・職場に居づれェ・・・」
「まぁそれを払拭する為にも私がみんなの前でいちゃついてあげるよ!」
「・・・やめろ・・・恥死する・・・」


大騒動を巻き起こし、なんだかんだで上手いことまとまった二人。
ドックに戻ったパウリーにルッチの怒りの鉄槌が下ったとか下らないとか。








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 ドックの中心で愛を叫ばせてみました(ルッチへと:笑)