−お子様恋愛相談室−
ある晴れた空の下、穏やかな風を帆に受けて一隻の船がゆっくりと進んでいた。
その甲板には仰向けに寝転ぶ少年と少女。
「あの雲、お魚みたいだねぇ…」
「んー、俺には肉に見えるぞ」
「あっちはお花かな…」
「んー、骨つき肉だなっ」
「・・・ルフィは何でも肉だね」
呆れたような言葉にルフィはにししっと笑った。
少女がため息を吐くとルフィはごろりと横向きになりそちらの方へと体を向ける。
「最近元気ねェなぁ。どうしたんだ?」
「・・・なんでもないよ」
「なんでもねェ訳ねー!ここんとこ毎日じゃねーか!」
がばりと身を起こして真剣に話すルフィを見て、
は意外とちゃんとクルーの事を見てるんだなと感心した。
少し考えてから、ルフィになら話しても良いかもしれないと思い、は口を開いた。
「・・・恋煩い」
「コイワズライ?」
なんだそりゃ食えんのか?とでも言いだしそうなルフィの顔に
はやはり人選を間違えたかもしれないとため息を吐いた。
しかしずっと誰かに相談したかったのは本当だった。
同性のクルーに相談しようかとも思ったが、そういった経験の豊富そうな二人に
自分の未熟な恋心を知られるのは恥ずかしかった。
(付け加えると、相談したが最後、いいオモチャにされそうだという確信めいた予感があった為でもある。)
その点、そういった知識は薄そうだが時々ずばりと物事の本質をつくこの船長ならば
案外良い相談相手になってくれるかもしれないと思ったのだ。
しかし当の本人は「コイワズライ、コイワズライ…」
と壊れたレコードのように呟きを繰り返しながら首を傾げている。
はもう一度ため息を吐いた。
「ルフィは誰かを好きになったことないの?」
「好き?俺はの事が好きだぞ?」
「いや、そういう好きじゃなくて…」
なんて言えば伝わるんだろうとは首を捻る。
「、誰か好きなヤツがいんのか?」
ふいにストレートな質問をぶつけられ、は少し躊躇ってから
この船のあるクルーの名を口にした。
「仲間だから好きになっちゃダメだと思ったんだけどね・・・でも好きになっちゃったの」
頬を赤らめて話すにルフィはそうかと短く答えてまた寝転がり
顔のうえに麦わら帽子をのせた。
「でも私なんて相手にしてくれないだろうなぁ・・・」
「なんでそう思うんだ?」
「だっていつも子供扱いだし、女として見られてないっていうか・・・やっぱり私、魅力ないのかぁ」
寂しそうに呟くと、ふいにその顔に麦わら帽子がのせられた。
「ルフィ?」
「そんな訳ねぇじゃねーか!」
帽子を除けてルフィを見るとそこには真剣な、怒ったような表情があった。
は少し驚き、そしてありがとうとはにかんだ。
「ルフィから見て脈あると思う?男同士でそういう話したりしないの?」
「んー、脈かぁ・・・。ねェ訳じゃねー・・・かも知れねえけど、ねェかもしんねー」
「なんじゃそら・・・」
は再びため息を吐いた。
「まぁルフィはまだ子供だからわかんないか」
「お前失敬だな!」
失敬だ失敬だと繰り返すルフィに、は可笑しそうに笑った。
その笑顔を見たルフィは複雑そうな顔を空に向けた。
「・・・・」
「んー?」
「俺さっきから胸のあたりがモヤモヤして気持ち悪ィ」
「何それ?胸焼け?」
「そういうんじゃねェ気がすんだけど…」
「なんか変なものでも食べたんじゃない?チョッパーに診てもらいなよ」
尚もうーんと唸るルフィに、やっぱりまだ色気より食い気なんだわ
と大人振った事を考えながらは苦笑した。
「なぁ、・・・」
「今度はなぁに?」
「・・・アイツに好きだって言うのか?」
「えっ!?えーっと・・・まだ言わない・・・かな?」
「そっか!」
「・・・・・・ちょっと、なんでそんな嬉しそうなのよ」
「俺嬉しそうか?」
「すんごい笑ってんじゃない」
ルフィはそんなことねェ、と言葉を濁すとが持つ麦わら帽子を取り、目深にそれを被った。
「ちょっとぉ、ちゃんと協力してくれる気あるんでしょうねぇ?」
「お!、もうそろそろおやつの時間だぞ!」
そういうとルフィは一目散に走りだした。
「ルフィー!?・・・まったくもう。あーぁ、やっぱりお子様に恋の話はまだ早かったか」
やれやれと首を振ったは
麦わら帽子で隠れたルフィの耳が赤くなっていた事には気づかなかった。
そこから少し離れたパラソルの下に、美しい黒髪の女性が座っていた。
女は細かい活字が並んだ本を膝のうえに開いていたが、その目は閉じられていた。
ふいに女はふふっと小さく笑い、隣に座っていたオレンジ色の髪の少女がそれに気付いた。
「何?その小説そんなに面白いの?」
「ええ、でも現実の方が面白いかもしれないわね」
「何それ?」
「本当に子供なのはどちらなのかしら、という話よ」
「はぁ?・・・あ!ロビン、さてはまたどこかに耳咲かせて盗み聞きでもしてたんでしょう」
ロビンはさぁどうかしらと優雅に微笑して本を閉じた。
その傍をルフィが「サンジおやつーーー!」と叫びながら走っていった。
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ロビンちゃんが咲かせてたのは多分目の方(笑)