バー−



きよしこのよる
大通りの巨大なツリーはチカチカと瞬き
どこもかしこもイルミネーションに彩られた街の中
一際美しいそれに私たちは見惚れる
その周りにいる幸せそうな恋人達をちらりと見やり
私たちもそんな風に見えているのかなと思うと
気恥ずかしさと嬉しさが胸をくすぐった
隣には大好きな人
・・・あぁ、クリスマス万っ歳!


人生初めての“彼氏と過ごすクリスマス”というイベントに酔い痴れ浮かれきっていると
広場の時計が10時の鐘を鳴らした。
まさかそれがシンデレラの時計的役割を果たすなどと知る由もない私は依然惚けっぱなし。
しかしながらその幸せな時間はルフィの大声で幕を閉じる。

「やべっ!もうこんな時間だ!、帰るぞ!!」
「え?帰るって・・・?」

私はもう一度時計を見返すが、やっぱり針は10時を差している。
そんな焦って帰る時間でもないし、大体今日はもっとゆっくりしたって・・・。
むしろ今日は帰りたくない的なことをしな作って言っちゃったりする日なんじゃないの?
ハッ、待てよ・・・これはもしかして!?
「それって・・・ル、ルフィの家に行くって事・・・?」
そ、そそそういうお誘い…!?

「お前ェ何赤くなってンだ?訳わかんねえ奴だなぁ。も家に帰んねえとダメだろ?ほらっ、急がねえと間に合わねぇ!」
「・・・なんでそんな急いでんの?」
「バカだなァお前!早く家帰って寝ねェとサンタが来てくれねぇだろ?」



「・・・・・・・・は?」



サン・・・タ・・・?

茫然とする私をよそに今から戻って布団入りゃぎりぎりセーフだなっ、とスタスタ歩き始めるルフィ。
ちょっ、ちょちょっと待ってよ!?サンタ?サンタ?サンタって・・・
お前いくつだよっ!?・・・・・あー頭痛くなってきた。

いや、別に信じるななんて言わないけどさ、ちょっとはこの状況考えなさいよ!
クリスマスに恋人と二人きりで、目の前はイルミネーションでロマンチックでっ!
ほらっ、周りのカップルなんか肩寄せあったり手繋いだり、チューしてる奴だっていんじゃないよ!
あれよ!あれが正しい恋人達のクリスマスってもんでしょーが!?

それをアンタって人はさっさと彼女おいて、言うに事欠いて帰るですって!?
ちょっとは名残惜しいとか離れがたいとか・・・なんかないの!?
あ〜!段々腹立って来たっ!

「ルフィなんかもう知らないっ!!」
その背中に叫んで、ぷいっと逆方向に走りだす。
ちょっとは困って反省すればいいんだあんな奴!
怒りながらルフィの引き止める声を背中で待っていると。

「おー、じゃーまた大晦日になー!」

・・・・・・・・・ッ!!!
なんっでそんなフツーにぃ〜〜〜!?


私は再びルフィの方にダッシュ!
「なんだ?忘れ物か?」
「ちょっとは追ってくるとかしなさいよっ!」
「お前ェが勝手に走りだしたんじゃねーか?変なヤツだな〜」

「っっっ!ルフィのっアホーーーーーー!!!」







「ひどいと思わないっ!!?」
「きゃはははっ!悲惨ねー!」
クリスマスの出来事を愚痴ると、ナミはテーブルをバンバン叩いて大笑いした。
ゾロはアホ臭って顔で呆れてるし、サンジ君は同情するような眼差しで苦笑してる。
今日はサンジ君家でお手製鍋&蕎麦を食べながらみんなで年越しをしていた。
私が脹れているのにも気づかないルフィは、お腹一杯食べて年越しカウントダウンが終わると
ウソップと二人でさっさと寝こけてしまった。
こっちはアンタのせいで新年早々ムカついてるっていうのに〜〜〜〜!!!


「恋人と過すはじめてのクリスマスよ!?期待するでしょ?私なんか間違ってる!?」
ちゃんは何にも悪くねェよ、悪いのはこの鈍感バカだ」
「いやが悪ィだろ、相手はルフィだぜ?ンなもん期待する方が間違いだ」
うぅ、ゾロめ!正論言いやがって!
確かにそこで幸せそうな顔で転がってるバカに何か期待する方が間違いだなんて分かってる。
分かってるけどさぁ・・・期待しちゃうでしょフツー!?

「だってその前に久々にデートした時だってエースとWiiやる約束してるからとか言ってさっさと帰っちゃうし
 冬休み入ってからも男友達と遊ぶ約束ばっかで全然会えないし!
 こんなの彼女って言える!?こんの鈍感バカめーーーっ!」
私はおコタに入って幸せそうに転がっているルフィ目掛けてみかんをぶつけた。

「くっそぉー幸せそうな寝顔しやがってっ!」
「まぁまぁ、案外ちゃんの夢でも見てるのかもしれないよ?」

そんなサンジ君のフォローに一瞬、え?そうなのかな・・・なんて乙女モードがオンした直後。
ルフィがむにゃむにゃと涎を垂らしながら寝言を呟いた。

「・・・ん〜、肉ぅーーーーーーー・・・」

〜〜〜〜〜!!

思わず青筋立てながら酒瓶を持ち上げてぶつけようとする私をサンジ君がどうどうと羽交い絞めにして止める。
「どぉーせ私は!会ったこともない赤服の白髭爺さんに負けて、兄貴とWiiに負けて、男友達に負けて、
 あげく肉にも負けるような女ですよぉーーーだっ!!」
うわぁーーーんっと突っ伏す私をナミがよしよしと仕方なしに撫でる。
「ダぁーービぃーーーっっ」
「・・・私はそんな馬が走りそうな名前じゃないわ」
「そんなに言うならルフィと付き合うのなんか止めちまえばいいじゃねェか」
「ばーか、お前そんな簡単な問題じゃねェだろうが」

ゾロとサンジ君のやり取りを聞きながら、ほんとになんで私はこんな鈍感男と付き合ってるんだっけと悲しくなった。
ルフィとはずっと仲のいい友達で、でも私はずっと片思いしてて
そしたらある日突然、好きだ!俺と付き合え!とか言われて
まるで当然の事のように付き合えとかいう偉そうな告白だったけど、私は泣きそうなくらい嬉しかった。
でも・・・なんか自信なくなってきたよ。本当にルフィは私のこと好きなの・・・?



初詣に行くため、私たちは日の出前に家を出た。
さび〜な〜とか笑ってるルフィはさっさとウソップと先を歩く。
「今年は栗きんとんエースに取られねぇよーにって祈ろうかな〜?」
「ぎゃははっ、なんだよそのお願い!」

―――ハッ、ついに栗きんとんにも負けたか・・・
そんな私のやさぐれた思いに気づいたのか、サンジ君が苦笑気味に頭をよしよししてくれた。
あーぁ、なんで私サンジ君を好きにならなかったんだろ?
ゾロだってウソップだって、きっとルフィよりずっと大事にしてくれる気がする。
なんで私はルフィじゃないとダメなんだろう・・・


神社に着くと人でいっぱいで、順番待ちをしているとルフィが聞いてきた。
は何祈るんだ?」

・・・ルフィの鈍感が直りますようにかな。それとももっと素敵な恋人が欲しいって祈った方が良いかもね!

ムカついて何を言ってやろうかと思ったけど、でもやっぱり本当に願いたいことなんてひとつだけで・・・

「ルフィと、ずっと一緒にいられるように・・・かな?」

マフラーに顔をうずめるようにして小さく呟いた。
たとえルフィが私のことなんて一ミクロンも考えてなくたって私は・・・

「何言ってんだお前ェ?バカだなー」


・・・・・・ほんっとにコイツ殺してやろうかしら!!?
「馬鹿はアンタでしょーーーがっっ・・・!」
殺意のオーラ全快でルフィの首絞めかけた私を、今度はウソップとサンジ君が二人がかりで止めた。
止めないでよ!この馬鹿シメないと私の気がすまないっ!!


「そんなもんわざわざ神様に願わなくったって、一緒にいるに決まってんじゃねェか」


意味わかんねーみたいな顔でしれっというルフィに一気に毒気を抜かれる。
惚ける私から、ウソップとサンジ君がやれやれと手を離し
ゾロはやっぱりアホ臭ェって顔してて、ナミがごちそうさまって笑った。


「そんな・・・当然のことみたいに・・・」
「俺はの事が好きで、も俺が好きなんだから当然だろ?」



あぁ、そっか、私はルフィのこんなトコが好きなんだ。
単純だし、鈍感だし、馬鹿だけど
どっから出て来るんだかわかんない自信で
当たり前みたいに一番大事な事を伝えてくれるルフィだから・・・。



いつの間にかみんなはいなくなっていて、私はルフィと二人でお願い事をした。

あとでみんなに何お願いしたのって聞かれて
「ルフィが怪我したりしませんよーに」って答えたら
そんな無茶なこと願われた神様が可哀想だと笑われた。



その帰り道、みんなから少し遅れてルフィと二人で歩く。
「ルフィってあんまり二人きりで長くいてくれないよね?夜とかさっさと帰るし・・・」
性懲りも無くまたむくれると私に、思ってもみない答えが返ってきた。
「だって一緒にいたら色々したくなるじゃねーか」
俺も男だしなぁと言うルフィに思わず赤面する。
「い、いろいろって・・・!?」
「でもよー、サンジとかゾロとかが、は男と付き合うの初めてだから
 そんなすぐ手ェ出したら駄目だって言われてよぉ」
我慢できねーからさっさと帰ったんだと言うルフィの顔は心なしか赤い気がする。

・・・って言うか・・・お前らのせいかーーー!!
前を歩く二人を追っかけていって殴ろうかと思ったけど
ふいにルフィに手を繋がれて止まった。
にししっと笑うルフィに赤面してしまう。

・・・殴るのは後にしよう。
今は、このどきどきが治まったら
イロイロ・・・しても良いから、今年はもっと一緒にいてねってルフィに伝えるんだ。
そう思うと益々心拍数が上がってしまって
私はとりあえず「今年もよろしくね」と呟いた。
おうっと呟いたルフィの太陽みたいな笑顔に、心拍数はただただ上がる一方だった。







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 ルフィはサンタを理由に彼女を置いて帰るといいよと思って(笑)