−僕のカブトムシ−
じぃぃーーーっとルフィが見つめてくる。
な、なんなんだ・・・と気おされて体を引き気味にするとそれに合わせてルフィも近づいてくるので
このまんまじゃ倒れてしまう!と、一先ずルフィの体を押し返した。
「なに、なんなのルフィ?」
「うーん、わっかんねェ!」
「いや、わかんないのはこっちだから」
「おれ、見てるとなーんか変な感じになるんだ。いや、違う!見てなくても変だ!
思い出した時とか声聞いたりした時も変になる。なんでだ?」
「・・・さぁ」
首を捻るというより体ごと捻るルフィに素っ気無い返事を返す。そんなこと、面と向かって言われましても・・・
っていうか、他に言い方ないのかな。変だ変だと言われると、私が悪いことしてるみたいじゃないか。
訝しがるような顔をする私をルフィはゴムの柔軟さで座ったまま床に頭を付けて見つめてくる。
いやいや、捻りすぎだから。そんなんしても分かんないから。っていうか逆さまに見上げないでよ。
「なんかなァ、胸のあたりがもやもやすんだ。あ、あと下半身とかも・・・もがッ!」
「うあぁぁぁーーーーッ!言うな!皆まで言うなッ!!」
どんだけざっくばらんな告白すんのよ!そんなこと言われて私はどんな反応すればいい訳!?
焦ってルフィの口を両手で押さえこむと・・・
「ぎゃーーーーーー!舐めったぁーーーーーーー!!」
その手を舐められた・・・
「ひゃっひゃっひゃっ!面白れェなー!」
床をバンバン叩きながら腹を抱えて笑うルフィ。こんのゴム・・・ッ!!
「何がそんなに面白いのよ!」
「だって赤くなったり青くなったりするしよぉ。それにの色んな顔見てるとなんか嬉しくなんだ」
にしししっ!と無邪気に笑われると、毒気も一気に抜かれてしまった。
まったく、これだから天然は怖いんだよ。
呆れたようにため息を吐くと、今度は手に視線を感じた。
またもじぃぃーーーーっと見つめている。今度は何だと聞く前に、その手を握られた。
「小っせぇなァー。なんだこりゃ」
お前・・・人の手つかまえてなんだこりゃとはなんだ・・・。
「さっきこれが口塞いだときなんか胸が苦しくなったぞ」
「・・・酸素がいかなくなったからじゃない?」
「あー酸素なー。はいはい」
絶対分かってないよコイツ。
話す間も私の手を握ったままで、仕舞いには傾けたり覗き込んだり色んな角度から見始めた。
「ルフィ、あんまり見ないで・・・っていうかそろそろ離して?」
「いやだ!」
はい、でたー。“どーん!”だよ。ルフィの断固拒否宣言。俺様イズムもいいとこだ。
「だってなんかの手触ってっと楽しいんだ。 んー、でもやっぱちょっと苦しいな?でも、この苦しいのはあんまヤじゃねェ!」
さいで。あーもう、こんなゴーイングマイウェイに赤面する自分が恥ずかしいよ。
頼むからそんな無邪気に手を握らないで。
若干テンパりはじめた私の顔を、またもルフィがじぃぃーーーっと見つめる。
「なんか顔赤ェな。なんでだ?」
「・・・さぁ」
「・・・・・・」
「なに?」
「その顔いいな!おれ楽しくなってきた!んー違うな、楽しいじゃねェ。もっとこー・・・んーわっかんねェ!」
・・・ついに考えるの放棄したか。
恥ずかしくなって顔をそらそうとすると、ふいにルフィの手が頬に触れた。
「!!」
「お!すっげェ!!もっと赤くなった!面白ェーーー!!」
「ちょっ・・・!離してよルフィ!」
「いやだ!逃げんな!」
両頬を両手で固定されて、顔を近づけるもんだからこっちはたまったもんじゃない。顔が沸騰しそうだ・・・
だけどルフィはなおも、じぃぃぃぃーーーーーっと視線を向けてくる。
あのさぁ、それ女の子に向ける表情じゃないから。子供が面白いもの発見した!みたいな顔だから。
目がわくわくしてるよ。かごに入れられて観察されてる虫ってこんな気持ちなのかな・・・。
「ルフィ、いい加減に・・・」
「!」
手を引き離そうと動かしたらルフィの手が一瞬私の唇に触れた。
一瞬体をびくっとさせたルフィが、まじまじと私の口を見つめてくる。・・・超嫌な予感。
「あのぉ・・・ルフィさん・・・?んっ・・!!?」
・・・・・・・ッ!!!!
うわぁーーー!!信じらんない!コイツまじでちゅーしやがった!いや、ほんとにやるかフツー!?
口を押さえて後ずさる私を前に、ルフィはきらっきらした顔を向けた。
「!なんか今すごかったぞ!気持ちいいな!なんだこれ!?もっかいさせろ!」
「アホか!何言ってんのバカ!!」
「なんだそりゃ?アホなのかバカなのか分かんねェぞそれ」
「どっちもだ!このスットコドッコイ!!」
わーわー言いながらもルフィの力に敵うわけもなく、抵抗空しく私は捕らえられた。っていうか押し倒された。
そんな状況にルフィの目はいっそうきらきらを増す。
「うおー!すっげドキドキすんな!、なんかスゲーぞ!?」
だからそれ女の子押し倒した時の顔じゃないから!肉目の前にした時と同じ顔してるから!
ん?食われる繋がりだから合ってるのか?・・・いやいやいや!食われちゃだめだろ自分!
そうは思うものの、どうしてか体が動かず押し倒されたまま黙ってルフィを見つめ返すだけの私。
あぁぁぁ・・・何これ、ちょっとどうすればいいの・・・?
ルフィの表情は少し真剣味が増したけど、目だけはすっごくわくわくしてるのが分かる。
私は昆虫か何かですか?
私を上からまじまじと観察している。視線が、痛い・・・
「ルフィ・・・これはちょっと・・・困る・・・」
無理やり搾り出した言葉は情けないくらい弱々しくて、恐々としていた。
こんなの聞くはずないと思ったけれど、ルフィは言った途端にびくっとして慌てたように離れた。
その反応に若干驚きつつ私も体を上げると、うつむき加減のルフィの表情には困惑や怯えの色が見えた。
「ル・・・フィ・・・?」
「、嫌だったのか?おれのこと嫌いになったか?」
まるで迷子になった子供みたいな顔。どうしていいか分からないといったようにおろおろするルフィについ笑みがこぼれた。
「私がルフィのこと嫌いになるはずないでしょ?」
「本当か!?良かったー!焦ったぞ!おーびびったぁーー!」
甲板にばたりと倒れて心底安心した顔で笑うルフィにつられて私も笑う。
「でも今度からいきなりこんなことしないでね」
「おう!分かった!おれいきなりしねェ!」
そんな握りこぶしで宣言されてもな・・・。やっぱりルフィと恋人になるのは難しそうだ。
っていうか、これを恋と認識してくれているかどうかすら怪しい。
「!おれもっかいキスしてェ!」
「はぁ!?」
「いきなりすんなっつったから聞いたんだ。なぁ、していいか?」
恋と認識・・・なんて考えた側からこれだよ。お願いだからその無垢な顔で聞かないでよ・・・。
断りを入れれば良いとかそういう意味じゃないんだけど・・・まぁルフィに空気よめとかいう方が無理か。
諦めてため息を吐くと、心を決める。
「・・・いいよ」
「ほんとか!?」
赤面しながら頷くと、ルフィは嬉しくてたまらないといった顔で笑った。
もういいや、どう足掻いたってこの笑顔には逆らえないんだから。昆虫扱いでもなんでもどんとこいだ。
今度はちゃんと向き合ってそっと口づけた。
不意打ちでなかった分、さっきよりも大分恥ずかしかったけれど、嬉しかった。
顔を離したルフィがまた、にししっと笑ったけれど、そこにはさっきよりちょっとだけ照れくささが滲んでいたから
あ、ルフィもちゃんと想っていてくれてるんだなって安心した。
―――さて、私が節足動物扱いから哺乳類に昇格するのとルフィがワンピース手に入れるのとどっちが早いだろうな。
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ルフィは知識なくとも本能でいちゃつけそうだなと