−雷夜の訪問者−
夜中に部屋をノックする音が聞こえ、こんな時間に誰だろうと扉を開くと
そこには枕を抱えたカクが立っていた。
「カク!どうしたの?」
「うむ、が一人じゃ寂しいんじゃないかと思うての、一緒に寝にきたんじゃよ」
「えぇ!?」
驚く私に構わず、カクはすたすたとベッドへ向かっていった。
私がエニエス・ロビーに来たのは数週間前のこと。
両親が他界し身寄りのいなくなった私を政府にいる父の知人がここへ連れてきたのだ。
住み込みで働くことになった私は、年も近いカク達の世話係を言い付けられた。
年端のいかない彼らが政府の諜報員として訓練していると知った時はとても驚いた。
それでも最近では徐々に打ち解けはじめ、特にカクは私にとても懐いてくれていた。
そうは言ってもこんな事ははじめてで、どうしたものかと私は困惑した。
大体来たばかりの頃なら寂しいだろうからと言うのも分かるが、そろそろここでの暮らしにも慣れてきた頃だ。
なんで今更というのが正直な気持ちだった。
けれどすでにカクはちゃっかり私のベッドに潜り込んでいて、
早く来いとばかりに自分の隣をぽむぽむ叩いてこっちを見ている。
理由を尋ねようと近づいた時、突然ピカッと外が光り雷鳴がとどろいた。
するとカクはびくっと縮み上がってばさりと布団の中に潜り込む。
「・・・もしかしてカク、雷が恐くて?」
「ち、違うぞ!は来たばっかりじゃし、寂しがっては可哀想じゃと思ったからの・・・」
再び電光が走り、カクは言葉を詰まらせた。
布団を持つ手がわずかに震えている。
そんなカクが可愛くて、危うく笑いそうになるのを堪えた。
「、何してるんじゃ!早く来い!」
「はいはい」
しょうがない、今晩は添い寝してあげようじゃないかと腹を括った。
布団へ入るとカクは幾分ほっとしたように顔を和らげた。
「安心しろ。わしこの前『しがん』覚えたばかりじゃから強いんじゃ。何にも恐がらんでいいぞ」
指銃なんて雷にしても感電死するだけじゃないだろうかと思ったが
あんまりにも誇らしげに言うので水を差さないことにした。
「そうね、雷様はおヘソを取りにくるって言うから、来たらやっつけてもらわないとね」
「ヘ、ヘソを取りにくるのか!?」
オロオロしだすカクに再び笑いそうになる。
「ちゃんとお腹しまってれば大丈夫よ」
「そ、そうか!」
そう言うと布団の中でもぞもぞと動いた。どうやらズボンにシャツをしまったようだ。
「私が来る前は雷の日どうしてたの?」
「前はフクロウの所に行ったんじゃが、寝相が悪くてのう。
クマドリは寝言がやかましいし、カリファは部屋に入れてくれんし。
ブルーノは一度寝たら起きんし、かといってルッチは相手にしてくれんし…」
の寂しさを慰めるためという自分で作った設定も忘れ、これまでの経緯を説明するカク。
「ジャブラは?」
「ジャブラはバカにされるから嫌じゃ!…って違うわい!だからのために来たんじゃと言うておるじゃろうが!」
やっと設定を思い出したらしいカクが必死に弁解する。
私は可笑しさに耐え切れず顔を布団で隠して肩を震わせた。
するとまたゴロゴロと言う音が鳴り響き、カクがびくりと怯える。
やれやれと小さくため息を吐いてカクに笑いかける。
「ねぇカク、雷が恐いから手を繋いでもらってもいいかしら?」
手を差し出すと、カクはぱっと顔を輝かせて「仕方ないのうっ」と私の手を握った。
手から伝わる温もりが暖かい。
ようやく安心したらしいカクが目を瞑り、私も段々と眠りに誘われた。
雷なんて恐くないけれど、やはり慣れない場所で緊張し続けていたらしく
私はこの日久しぶりにぐっすりと眠ることが出来た。
「なーんてこともあったわねぇ」
窓際で外の嵐を見つめながら言うと、カクが口を尖らせて
「一体いつの話をしとるんじゃ」
とむくれた。
「可愛くないなぁ、あの頃はあんなに可愛かったのに」
「なーに言っておる、わしは今でも十分可愛いじゃろう?」
小首を傾げながら大きな目をぱちぱちとしてみせるカクに肩をすくめた。
可愛いなんて言ったら怒って膨れる時期もあったのに
今じゃすっかり自分の可愛らしさを武器にするしたたかさまで覚えてしまった。
まったくあの純粋さはどこへいってしまったんだか。
あの日のように光る稲妻に目を向けていると、ふいに後ろから抱き締められた。
「明日からの新しい任務は長期になりそうじゃ」
「・・・そうみたいね。でも素敵な所だって聞いたわよ」
「がおらんのに素敵な訳ないじゃろうが」
腕に力が込められ、耳に口付けが落とされる。
「雷の日に添い寝してくれる人がいないもんね」
「減らず口じゃのう」
そんな口はこうじゃっと唇を塞がれた。
くすくす笑っていると、ベッドへと倒される。
私を組み敷くカクを雷光が一瞬照らす。
「部屋へ戻らなくて良いの?」
「雷が恐くてのう、がいてくれんと眠れんわい」
よく言うよ、と呆れながらも首筋へと落とされるキスを甘んじてしまう。
ふいに痛みを感じ、そこへ赤いシルシが付けられた事を知る。
「ワシがおらん間に悪い虫がつかんようマーキングじゃ」
悪戯っ子のようにカクが笑う。
ひどい人だなぁと心でため息を吐いた。
新しい土地で忙しくするうちに私のことなど忘れてしまうくせに
私のことはしっかりと縛り付けていくなんて。
きっとこれから会えなくなる分まで今夜は離してくれないんだろう。
そんなことをされたら離れた時一層恋しさが募ってしまうのに・・・。
きっとまたこの温もりが戻って来る日まで
眠りの浅い長い夜を過すことになるのだろうと覚悟しながら私は静かに目を閉じた。
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SBSのチビCP9が可愛すぎて、色々考え出すとやるせない