++ ゾロ ++



「だーから違うって!こう向いたら東は右!右だってばみーぎ!お箸持つ方!」
「うっせェな、それくらい分かるっつんだよ」
「分かってないから言ってんでしょーが!はい、じゃあ東が右なら南は?」
「下。・・・・・・・地下か?」
「・・・・・・・・・・・・・」



・・・信じられない。もうコイツは方向音痴とかいう以前の問題なんじゃないだろうか・・・
呆れて言葉も出ない私を気にも留めず、ゾロはどうやって地面に穴を開けるかを考察し始めている。
はーい、口に刀銜えて煩悩砲ー!ってちっがーーーう!!

「穴なんか掘らなくたって良いんだってば!」
「お前ェが地下って言ったんじゃねェか」
「言ってない!南って言ったの!下じゃなくて後ろ!」

怒鳴れば納得いかないような顔でちッとか舌打ちしてる。
舌打ちしたいのはこっちだっつの!

「大体なんだよ迷子にならない為のトレーニングって・・・そんなもんいらねェ・・・」
「いるよ!ゾロの迷子っぷりは絶対いつか船に戻ってこれなくなりそうだもん」
「んなワケあるかよ」
「何気なく外出して故郷に帰れなくなったヤツが何を言うか」
「・・・・・・・・・・・・・・」

痛いところをつかれて黙り込んだ仏頂面にため息を吐く。

「そりゃ19で迷子とかなら『や〜ん、強面なのにちょっと抜けてるとこがカワイイ〜』
 とかって済まされるかもしんないけどね、これから歳くってみなさいよ。
 40、50のオッサンが迷子とか痛いったらないわよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「アンタだっていつか所帯持つかもしんないでしょ?
 どーすんのよ子供を遊園地に連れてって一緒に迷子になったりしたら。
 そのデッカイ図体して一緒に迷子センターでお母さん待つのか?
 一緒になってペロペロキャンディーを貰うのか!?」
「貰うかっ!ったくしつけーんだよてめェは!ガミガミガミガミ」
「あ〜奥さんの気苦労を考えただけで涙が出てくるよ」
「いいからてめェは黙って俺んとこに来りゃいいんだよ」
「そりゃあ子供が心配だから行くけどさ、でも夫が迷子センターとか・・・」


・・・・・・・・・・・ん?あれ?この会話なんか変じゃないか?
今私未来のゾロの奥さんの話をしてた訳で、そんでコイツはお前が来いって・・・
んん!?これじゃあまるで私がゾロの奥さんになるみたいな・・・


「なんだよ」


まじまじと人相の悪い面を見返すけど、当の本人は至って涼しい顔。
さらっとプロポーズもどきなこと言っといて自覚なしかお前は!
だからってなんか深くツッコみづらいし・・・
くそぅ・・・腹立つなコノヤロー。
一人で照れてる私がバカみたいじゃないか。

居た堪れなくなった私はふんっと背中を向けて赤くなった顔を隠した。

「もういっそフランキーに改造してもらって体にナビとかつけちゃえば?」
「アホか!いらねェよそんなん」
「大丈夫だって、サンジ君だってメロリンレーダーとか付いてるし
 ウソップだって“何かがやべーセンサー”とか付いてるし
 時代はサイボーグ人間が主流なんだよ。恥ずかしくないって」
「俺をアイツらと一緒にすんじゃねェ!っつーかあの二人はサイボーグじゃねェだろーがッ」

えぇ〜、だってどっちも超高性能だよ?
サンジ君なんか数十メートル先の水着美女とかすぐ見つけてくる・・・
・・・しかし考えてみればつくづく色物揃いの船だなぁ。

などと考えながら、この天才迷子をどうすべきか再び悩む。
もういっそ本気で改造してもらった方が良いような気がするんだけど・・・

「そういやお前は迷ったりしねェよな」
「そりゃあ・・・」

私はこの一味に入るまで結構サバイバルな環境で過したりしていた。
だから方角把握能力は長けている方だと思う。
草木の生え方や太陽や星座の位置、風向き等、そういう知識があればある程度なんとかなるものだ。
でもだからこそ、この迷子のエキスパートみたいなゾロが信じられないというか、気になってしまう。
どうにも放っておけない。
それで心配になってこうして色々なレクチャーをしたりしている訳なんだけど・・・
どうにもやる気が見えないというか、危機感が足りないというか。

「ずっと私がナビ出来る訳じゃないんだからさぁ、もっと意欲をこう・・・」
「なんでだ?」
「は?」
「お前ェがずっと俺のナビしてりゃいいじゃねェか」
「ずっとって・・・」
「一生」

ぽかん、と見上げる私にゾロはいつものにやりとした不敵な笑みを浮かべた。












(これでもうトレーニングなんざ必要ねェだろ?)




 




 


――数日後

「ゾロー!フランキーがナビの機械作ってくれたよ!」
「はァ?いらねェっつったろーが」
「まぁそう言わずに。すごいんだよコレ!その土地の地図があれば音声で案内してくれるの。
 ちょっと試してみようよ、ね?」
「ちっ、しょうがねェなァ・・・」


 

――数時間後

・・・・・・・あれ、なんでこんなことに?

目の前には道なき道を進んでいく大剣豪。
ナビ使ってちゃんと一人で歩けるかを試すために私は口出ししないようにしてたんだけど・・・

「なんだこりゃ。真っ直ぐったって道ねェじゃねーか」

いや、真っ直ぐってのは道なりに真っ直ぐってことで・・・
あぁぁ・・・また煩悩砲使って無理やり道作っちゃったよこの人・・・
ああ、ほらナビも道が違うって言ってんじゃんか。引き返せって・・・


「・・・引き返すなんざ男らしくねェ」


男らしさの問題ィィィ!?
っつーか迷子になってるヤツが男らしさを語んなッ!

 



あぁ・・・そっか・・・ゾロに必要なのはナビじゃなくて
ダメに効く薬だったのか・・・

 

 

 


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 チョッパー大至急!