++ ンジ ++




ラウンジでお茶を楽しんでいたが唐突にふふっと笑い出した。
それにサンジが首を傾げると「ごめんごめん、ちょっと思い出し笑い」となにやら可笑しそうにしている。


「実は昨日夢にサンジ君が出てきてさ」
「えっ、俺!?」


夢にまで出てくるくらい俺のことを考えててくれたなんて幸せーッ!と浮かれつつも
・・・ん?でもそれの何が面白かったんだ?と疑問が過ぎる。


「それがね、『眠れる森の美女』みたいなストーリーだったの」


ますます良いじゃねェか!
ちゃんがお姫様で俺が王子!茨の道も愛の力で乗り越えて姫を救いに・・・ッ!


「ううん。逆」


・・・え、逆?


「私が助けに行くほうでサンジ君が寝てる方」


・・・がーん。俺どんだけ情けない役?
っていうかそんな夢を見られる俺って一体なんだと思われて・・・


「えーでも似合ってたよ?スリーピングビューティーなサンジ君」


うーわ、嬉しくねェ・・・



ずーん、と落ち込むサンジに構わずの方は楽しそうに話を続けている。

「それでねそれでね、私がキスをしたらサンジ君が目覚めるの!」
「・・・・・・・・・・・・」

彼女の言葉に今度は微妙な顔をするサンジ。
嬉しいが素直に喜べない状況にイマイチどう反応して良いのかわからないらしい。

しかし、ふと。


「それって俺狸寝入りしてたんじゃねェ?」


という考えが過ぎってそのまま口に出してしまった。
彼女にキスしてもらうために寝たフリ。そいつが俺なんだとしたら恐らくそうだろう。
くそぅ、上手くやったな夢の中の俺め。なんてことを思いながらぶらぶらと銜え煙草を揺らしていると。


「え、何その実体験っぽい話しぶり」


・・・・・・やぶへび。


「ちょっとサンジ君・・・?まさか・・・ッ」


い、言えねェ、普段は照れ屋な君が俺が寝てる時だけはちょーっと大胆になってこっそりキスしてくれたりすんのを
偶然気づいてしまって以来隣で寝てる時は狸寝入り決め込んでる事が多々だなんて口が裂けても言えな・・・


「信じらんないっ!!」


・・・あれ?今俺口に出してました?


憤怒してそっぽ向いてしまった彼女を見てサンジはようやく自分の失態に気がついた。
あーやっちまった・・・と反省しつつも、耳まで赤くしている彼女の後姿に
照れて怒ってるちゃんも素敵だァーーーッ!!と反射的にメロリンする様はさすがラブコックと言うべきか。



しかしながらサンジにはさっきから僅かに心に引っ掛かっていることがあった。
それが彼のイタズラ心に火をつける。


「はぁ・・・しかしちゃんが俺以外の野郎にキスだなんてショックだなァ・・・」


芝居がかった重々しいため息に、穏やかでないものを感じ取っては振り向く。

「ちょっと、話聞いてた?だから夢に出てきたのはサンジ君で・・・」
「でもそれは今ここにいる俺じゃないでしょ?」
「え、まぁ、そうだけど・・・」
「許せねェなァ、俺以外の男にキスなんて・・・」
「こんなのただの夢じゃない」


そんな言い掛かりは心外だと剥れるの顎をくい、と持ち上げて
サンジは触れるギリギリの所までいきなり距離を詰めた。



「例え夢にだって君を譲りたくねェって言ったら?」



至近距離で甘く囁かれたは再びその頬を染め上げる。
それににやりと口端をあげるサンジはいつのまにか形成逆転しており攻めの姿勢を崩さない。

「俺にもしてくれたら許してあげる」
「今ここで!?」
「当然」
「む、無理よ」
「どうして?寝てる俺にならあんなに素敵なキスをくれるのに?」

まさかサンジが目覚めていただなんて露程も思っていなかった
羞恥で顔から湯気が出そうなほど真っ赤に染まり、居ても立ってもいられず逃げようとした。
が、そう易々とサンジが逃がしてくれるはずもなく。
がっちりとその腕に閉じ込められ、視線すら逸らせないように頬に手を添えられていた。

力の差は歴然で、サンジのにんまりとした表情は完全に楽しんでいるときのそれ。
逃れられないと悟ったは恥ずかしさから潤んだ目でじとりと恨みがましく睨みあげる。
それにくすくす笑いながら煙草を灰皿に押し付けると、はいどーぞとサンジは目を閉じた。

どーぞと言われても・・・

目の前で目を瞑るサンジに尋常でないほど鼓動が速くなっていく。
意識があるとわかっている彼に自分から口づけるだなんて。
しかもこんな明るい所で・・・

そんな風に抵抗感いっぱいで逃げ出したくて仕方がないはずなのに
目を閉じた彼をこんな明るい、しかもこんな至近距離で見ることなど初めてで
プレッシャーに耐え切れずという勢い半分でありながら、どこか引かれるようにはサンジにそっと近づいた。

目を瞑っていても伝わってくる彼女の緊張と気配に思わず唇が弧を描いてしまいそうになるのを堪えていると
やがて意を決したように近づいてきた彼女がそっと羽根が触れるようなキスをその唇に落とした。
それにくすぐったいような、けれど堪らない嬉しさを感じてサンジは今度こそ口角を上げる。


けれど成し遂げたことでほっとしてこれでようやく解放されると
真っ赤になりながらも息を吐いて油断しているを見てサンジの心に再び火がついた。

いつの間にか彼女の後頭部に回していた手でぐっと引き寄せ、たった今離れたばかりの唇を再び塞ぐ。
それに驚いて目を見開いた彼女が慌ててサンジの胸を押し返した。


「ちょっ・・・私からしたら終わりなんじゃなかったのっ!?」


顔を赤らめて抗議する彼女にサンジはいけしゃあしゃあと言ってのけた。



「やっぱ俺には王子役のほうが合ってるみてェだわ」



人の悪い笑みを浮かべる王子様への文句は再び塞がれた口づけであっさりと封じられてしまった。













M
y Sleeping Beauty

 (その正体は夢にすらヤキモチを焼く王子様)








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 サンジの寝顔はまさにスリーピングビューティーだ