++ ルフィ ++
ザッザッザッザッ・・・ビシビシビシビシ・・・ずるずるずるずる・・・
視界の端に棒切れがちらつく。ただのその辺に落ちてる枝。
しかしルフィ曰く『良い感じの棒』・・・らしい。
ジャングルのような島に到着した私たちの船。
島が見えてきた頃からうずうずし始めていたルフィは、島に着くやいなや錨を下ろす前に船から飛び降りた。
それに強制的に巻き込まれた私は今こうして冒険だか探検だかに付き合わされているんだけど。
・・・さっきからどーにもあの『棒』が気になる・・・
ただの棒なんだ。本当にただの棒。
前にみんなで歩いたときもこんな風にルフィが棒を振り回して
チョッパーがいい雰囲気の棒だ!とか言って羨ましがってた。
ただの棒の何がいい雰囲気なのかさっぱり分からない。
と、思っていたのだが・・・
(・・・なんか羨ましくなってきた・・・)
地面に落ちていた時はただの棒切れにしか見えなかったのに
ルフィが持った途端なんだかすごく価値のあるものに見えてきた。
その辺に枝なんて沢山落ちてるけど別にそれを欲しいとは思わない。
でもなんかルフィのは・・・欲しい。
「ン〜ンン〜〜♪みなみのォし〜〜まはあったけえ〜〜♪」
「ルフィ、あのさ・・・」
「お、なんだ。お前ェも一緒に歌うか?」
「いや、そうじゃなくてその棒・・・」
「なはははッ!いい感じだろ」
「うん・・・それであの、私も持ってみたいんだけど・・・」
「え〜!?自分で見つけりゃいいじゃねェか」
前にチョッパーが欲しがった時もルフィはやんねェぞと言っていた。
そりゃそうなのかもしんないけど、でもその辺に落ちてるやつを見ても
どれがいい感じでどれがいい感じじゃないのか見分けが付かない。
ルフィが持ってるやつ以外は全部同じに見えるんだもの。
むぅっと口を尖らせているとルフィが立ち止まって私を覗き込んでくる。
「そんなに欲しいのかコレ?」
「うん・・・欲しい・・・」
「仕方ねェなぁ。ホレ」
「いいの!?」
「おう!俺はまた違うの探すからなっ」
ルフィの棒をもらった私は上機嫌でそれを振り回す。
さっきルフィがやっていたみたいにがりがりと岩をなぞったり
ビシビシと地面に叩きつけたり。にしししッなんか楽し〜♪
するとルフィが今度は木に絡まっているツタをぶちっと引きちぎった。
にぃっと笑ってそれをぶんぶんと振り回し始める。
ムチみたいにばしばしとその辺にぶつけたりずるずると引き摺ったり。
(・・・・・・・・・・・・・・)
なんかあっちの方が良さげに見えてきた。
これよりカッコイイ気がする・・・長いし・・・ちょっと葉っぱとかも付いてるし・・・。
そう思うと途端にこの棒切れがつまらないものに思えてくる。
「ルフィ・・・やっぱりそっちがいい」
「はァ〜?お前ェワガママだなァ〜」
ルフィの言ってることはもっともだ。どうみても私はワガママ。
でも・・・ルフィが持ってるやつの方がカッコ良く見えるんだもん。
口をへの字にして俯くとルフィがむ〜っと唸った。
やがて手に持っていたツタをずいっと私の前に差し出す。
「ったく、しょ〜がねェヤツだな〜」
ツタをもらって私の顔はぱあっと輝く。
わーいわーい!
にっこにこしながらそれをぶんぶんと振り回していると
ルフィがきょろきょろと辺りに視線を巡らせた。
それを見て私の中に緊張がはしる。
多分これって隣の芝は青いとかいう現象なんだ。
きっとルフィがまた新しいのを見つけたら今度はそれが欲しくなるに違いない。
でもさすがに三度目はくれないだろう。
次言ったらいくらルフィだって怒る気がする。
どうしよう・・・
あ!ルフィが拾う前に私が拾っちゃえばいいんじゃない?
ルフィの視線の先を見張って、ルフィが拾いそうだと思ったらそれを先に拾う。
それなら私がルフィの持ってるものを取ることにはならないし。
よし、それでいこう!
私は右手でツタをずるずると引き摺りながら必死でルフィの視線の先を追う。
恐ろしく真剣で常にはないほど集中している。
ルフィが獲物を決めて手を伸ばす。その一瞬が勝負だ!
目を血走らせて殺気立たせながらその一瞬を伺う。
するとルフィの視線が一点に止まった。
それは私たちが歩く少し先。私たちの丁度間あたりの位置。
あれか!
ルフィの手がわずかに動いた。
しかしそれに負けじと私は手を伸ばす。
絶対先に取るんだ!
しかしルフィは急に思いとどまったように手を伸ばすのをやめた。
あれ?と思っていると。
パシッ。
ルフィは違うものを掴んだ。
私は予想外の出来事に固まる。
「にししッ!やっぱ俺こっちにする」
こっちって・・・
それ私の手なんですけど・・・。
呆然とルフィを見上げるとルフィは真顔で言った。
「これはお前ェにやんねェかんな!」
やんねェも何も私の手なんですけど。
呆気にとられている間にルフィはご機嫌な様子でまた歩き出す。
手を繋がれている私も当然それに引き摺られるように。
「ン〜ンン〜〜♪き〜た〜のし〜〜まはさ〜〜む〜い〜〜♪
あたまブルブルアホばっか〜〜〜〜〜♪」
気のせいかルフィはさっきよりもずっと楽しそうに見えた。
それを見て私も楽しくなってくる。
うん。私も棒切れやツタよりこっちの方がいいや。
にやけながら私は右手のツタを手放した。
ジャングルにはきっとまだまだ『良い感じの棒』があったのだろうけれど
私はもう目移りすることはなかった。
だってグランドライン中探したって今私が手にしているものより魅力あるものなんてきっとないもんね。