++ カク ++
「ワシのプリンが無いーーーッ!!もしやまた貴様かパウリー!?」
「ん?ああ、あれお前のだったのか。誰のかわかんねェから食っちまった」
こっ・・・のたわけがぁーッ!誰のか分からんでもお前さんのではないことぐらい分かるじゃろうが!
ガレーラの食堂の端っこにあるデカイ冷蔵庫は職員達の共有スペース。
そこは各々が自分の飲み物や食物を好きに入れられるようになっておった。
しかし年中無休で金欠なこの男が勝手に他人のそれに手を付けることもしばしば。
この間もルッチが勝手にアイスバーを食べられたとかで無言のままキレておったわい。
しかしじゃな、今回のワシの被害はその比ではないんじゃ!
人気の洋菓子店で一日三十個限定でいつも開店から一時間もしないうちに売り切れてしまうという超レア物なんじゃ!
いつもは仕事の時間と折り合いが付かないんじゃが、今日は査定の帰りに店まで大急ぎで走って奇跡的に買えたんじゃよ。
確かにワシは名前を書いてはおらんかったが、普通あれには手を付けんじゃろうが!
その辺で売ってる三個セットで百ベリーとかの安物じゃないんじゃぞ!?
それをこの男はぬけぬけと・・・!
あぁぁぁ・・・今日はこれだけを楽しみにしておったと言うのに・・・
「そんなに取られたくなきゃちゃんと名前書いとけよな〜」
ちっとも悪怯れずにやにやしながらごちそうさんっなどと抜かすパウリーに一瞬本気で殺意が芽生えたぞ・・・!
食い物の恨みは恐ろしいんじゃ!今に見ておれ!
しかしワシはここでハッとした。
今日はプリンと一緒にドックに集まるお嬢さん方からの差し入れもまとめて突っ込んでおった。
確かその中になかなか値の張る酒があったはず。
こうしてはおれん!パウリーにくすねられる前になんとかせんと!
ワシは食堂までダッシュし、冷蔵庫に入れたものに一通り名前を書いた。
「ふぅ、これで一安心じゃ」
安堵して食堂を出ようとすると、ふいにカタンと音が聞こえた。
誰もいないと思うとったのになんじゃろうと音がした方へと行くと、柱の死角で一人の娘が寝ておった。
なんじゃ、ではないか・・・。
はこの食堂で働く娘でワシもよく世話になっておる子じゃった。
サバサバした性格で多少素っ気ない所もあるが、付き合いやすくてワシは気に入ってるんじゃ。
しかしこんな所で寝るなんてえらく堂々としたサボりじゃのう。
笑いそうになるのを堪えながら近づくと、その首がカクンと揺れて肩から髪がさらりと落ちた。
・・・随分あどけない寝顔じゃのう。
落ち着いておるから大人びた印象じゃったが、こうして見ると意外と幼いわい。
いや、幼いというか・・・・・・
辺りを見回せばワシらの他には誰もおらん。
―――そう言えばここは共有スペースじゃったな・・・
そんなことを考えながら、ワシは引かれるようにそやつの目の前にしゃがみこんでいった。
「・・・ん・・・カク職長?」
「目が覚めたか?お前さんいくらなんでも無防備過ぎやせんか。こんなとこで堂々と寝て」
「・・・すいません」
「サボっておったのを咎めておる訳じゃないぞ?不貞の輩に襲われたらどうするんじゃと言っておるんじゃ」
「はぁ・・・あの、カク職長?なんで・・・ペン持ってるんですか?」
自分の額あたりにかざされていたペンを訝しげに見上げる。
ぷ、お前さん寄り目になっておるぞ。
「あ!まさか人が寝てる間に落書きしたんじゃ!?おでこに“肉”とか書いたじゃないでしょうね!?」
「阿呆。ワシそんなベタなことせんわい」
ワシの言葉も聞かずにが近くの壁に掛かっていた鏡に走る。
「うわっ!マジで落書きしてる!」
前髪を上げながらが思い切り顔をしかめた。
しかし鏡に文字が反転しているせいですぐには何と書いてあるか分からんかったようじゃ。
「これ・・・“カク”って書いてあるんですか?」
「そうじゃよ」
満面の笑みで肯定すれば、訳が分からないといったようにいっそう眉間の皺を濃くした。
「なんで?」
「共有スペースに置いてあるもんにはちゃんと名前を書いておかんと誰かに取られてしまうかもしれんからな」
「・・・それってどうゆう意味・・・」
今度は困惑の色を見せるそやつににっこりと笑顔を見せる。
「そんなの決まっておるじゃろう」
君は僕のもの
(あれ?いつの間にか左手に“ルッチ”って書いてある・・・)(何じゃと!?)
(よく分かんないですけどとりあえず左手はカク職長のじゃないみたいですね)
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靴脱いだら足の裏にアイスバーグって書いてると良いw