−情けないほど不器用な−
「総ちゃんは好きな人の前だと不器用になるのね」
さんが突然そんなことを言い出したのは、俺と姉上が一緒にいるところを偶然見かけたかららしい。
姉上と一緒にいる俺が、さんの目にはそう映ったようだ。
別にマズイ所を見られた訳じゃねェが、身内と一緒のところを見られるっていうのはどうも気恥ずかしくっていけねェ。
相手がさんだからそれは尚更に。
やけに優しい顔でそう話すさんの言葉を否定しようかと思ったが、やめた。
多分それは図星だから。
「・・・そーかもしれやせんねェ」
諦めたように呟くと満足げな微笑を見せるさん。
ため息を吐きたくなった。
なんでそこまで分かってんのに俺の気持ちに気付いてくれねェんですかィ。
アンタの前じゃ人一倍不器用で情けねえ男になってるってーのに。
なんて酷ェ人だ。本当は俺よりSなんじゃねェですかィ?
心の中で言えるはずもねえ悪態を並べる。
気づかねえのは俺が眼中にないから。
そんなのとっくに知ってらァ。けど、認めたくねェだけでさァ・・・。
人の気も知らずに無垢な笑顔を向けるから、その度にらしくない程心臓が跳ねる。
全く、人畜無害そうな顔して恐ろしい人でさァ。
計算じゃねえあたりがよっぽど性質が悪ィ。
俺も平然とした振りしてやすけどねィ、こう見えて実は打たれ弱いんですよ?Sだからこそね。
「総ちゃん?」
無防備に顔を覗き込まれた瞬間、俺の中でぷつんと何かが切れた。
・・・やっぱり俺ァ攻める方が性にあってるみたいでさァ。
気づいてくれねェなら気づかせるまででィ。
突然手を握られたさんはデカイ目をもっとデカくして俺を見つめた。
強気な事を考えていても俺の手にはどんどん汗が滲んでくるし、口の中はいやに乾いてきやがる。
あーぁ、ほんとに情けねェ。
なかなか言葉を告げられずにひたすら見つめ続けているとさんの頬が僅かに朱に染まった。
・・・なんでィ、全く脈なしって訳でもねェのかい。
ふ、と笑って握る手にいっそう力を込めた。
「好きでさァ」
言えばその白い肌は益々赤みが増して、黒目がちな目は潤んでいった。
まいったなァ、心臓が煩くていけねェや。
相手が狼狽えればこっちは余裕が生まれるのが常なのに。
相手がこの人だとそう簡単にはいかねェようだ。
二人で赤くなるなんざ甘酸っぱ過ぎて食えたもんじゃねえ。
土方コノヤローに見られた日にゃ切腹もんだな。あ、もちろん腹切るのは土方の方ですぜ。
想っていることを全部伝えようとしたが、どうも言葉になりゃしねェ。
これだからイモ侍はいけねェや。気の利いた言葉なんざ知らねェんだ。
「アンタが好きなんでさァ。ほんと、もうどうしていいかわかんねェくらいに・・・好きでさァ。」
だからこれが俺の精一杯。
さぁ、応えてくれませんかねェ?
その真っ赤になったほっぺ。期待して良いんですかィ?
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ドS王子の純情