−次のを証明せよ−


参考書に取り組むの前に頬杖をついてぼーっと見つめる。

睫なっげェな〜・・・これで自毛かよマスカラいらずだなぁオイ世の中の女共のマスカラにかける所要時間知ってんのかぁ?
短けェ奴は三度塗りとかしてるらしいっつーのにそれを天然ロング睫ですかコノヤロー
そのでっかいお目目に長んげ〜睫で上目使いとかされた時のこっちの胸キュン具合とか分かってんのかよ
っつーか顔上げねェかなぁ〜いやこの角度も可愛いんだけどそろそろちゃんと顔みたいっつーか


・・・とか色々考えてたらがちらりこちらを見た。
お、上げろ〜上げろ〜って念が届いたか?と見返すとなにやら恥ずかしそうに目を逸らす。


「・・・先生、あんまり見られるとやりづらいんですが」
「・・・ちゃーん、今教室にふたりきりだって知ってた?」

噛み合わない切り返しに一瞬きょとんとしたが、やがてはにかむように笑った。

「あんまり見られるとやりづらいよ、銀ちゃん」

言葉の意図が伝わったことに満足して俺も口角を上げた。するとはますます可愛らしく微笑む。
あー俺墓穴掘ったかも。顔上げたら上げたで手ェ出したくなんなぁ。
いやいやいや、ここ一応学校だしね一応。


再びノートに向かい始めたに安堵しつつも寂しさを覚える。
まぁ曲がりなりにも教師が受験勉強の邪魔しちゃまずいしなと机から少しだけ体を離した。



・・・受験、なぁ・・・。


真剣な表情でシャーペンを走らせる姿を横目で見て、また胸ん中に薄ら寒ィ風が吹くのを感じる。
うっかりコイツに言っちゃあならねェことを口走りそうになり、それを塞ぐように新しい煙草を銜えた。



受験が終わりゃあコイツは遠くに行っちまう。
ちと気は早ェが、ま、こいつの学力なら十中八九合格は固ェだろう。
今は俺を好いてくれてるが、大学入って楽しいもんいっぱいあって色んな出会いを経験したら
あっという間に俺のことなんか忘れちまうだろう。
こんだけ可愛いんだ、周りの男共が放っとく訳ねェしもう大学一歩歩く度に声掛けられんだろうよ。
あーぁ想像しただけで胸クソ悪ィぜコンチキショー。

一生懸命頑張ってる姿は偉ェなと思うし、応援してやりてェと思う気持ちにも嘘はねェ。
ただ、時々どうしようもなく身勝手な感情が暴走しそうになる。


どこにも行くな。

ここにいろよ。側にいてくれよ。


絶対に口にはしちゃならねェ言葉。
送りだしてやらなきゃならねェ側の俺がンな引き止めるような事言ってどうすんだ。
コイツの未来を邪魔するような真似して良い訳ねェだろーが。

散々自分に言い聞かしてエゴ塗れの言葉を飲み込む。
あーぁ、もし俺がコイツと同じように学生ならきっとこんなに葛藤せずに言えたのになァ。
なんでコイツは俺の教え子なんかになっちまったんだか。

行き着いた先の不毛な考えに自嘲を洩らす。
するとが不思議そうに顔を上げた。


「銀ちゃん?・・・どうかしたの?」

僅かに顔を曇らせて訝しそうに小首を傾げるに、なんでもないと薄く笑って俯いたまま首を振った。
それに納得いかない顔をするの頭をくしゃりと撫でる。

「ちょっと糖分が切れただけだ」
「あ、私チョコ持ってるよ」
「マジでか!?」

食いつけばは可笑しそうに笑った。
あー、その笑顔好きだわ。すげェ好き。



貰ったチョコを口に入れてもぐもぐと味わっていると、がじっとこちらを見ていることに気付いた。
ん?と無言のまま目だけで尋ねるとさっきと同じように顔を曇らせる。


「やっぱ銀ちゃん変だよ。なんか・・・寂しそう・・・」


・・・はぁー。人がせっかく我慢してんのに確信つくんじゃないよまったく。
何敏感に気付いてくれちゃってんですか。
愛ですか?愛の力ですかコノヤロー。


ため息吐きながら机の上に置いてあるの手にそっと自分の指を絡ませる。
少し驚きを見せたの顔が徐々に赤くなった。
あ〜またそんな可愛い顔してくれちゃって。

そんなのさぁ


・・・離したくねェって、思っちまうじゃねーか。


「・・・ちゃん遠くに行ったら寂しくなるなァと思ってさ」


思ってもみないほど情けねェ声が出て思わず自嘲した。
何おセンチなこと言ってんだか。
バカか俺ァ。ほら見ろびっくりしちゃってんじゃねェか。

「先生がそんな風に言うと思わなかった」

ですよねぇ〜俺だってそう思ってたもん。女々しいったらありゃしねェっつーんだよ。

「先生普段そういうこと言わないから・・・そんな風に思うの私だけだと思ってた」

・・・・・・・・・・はい?

「嬉しい・・・」

・・・オイオイオイ、なんだその可愛らしい反応は。頬染めちゃってえへへっておま、そりゃ反則だろーが。
先生抱き締めたくて仕方ないんですけどちょっと何だコレ。

赤くなった面を逸らしてがりがりと頭を掻いたらがくすくすと笑った。


「大学入ったら私バイト頑張るね。お金貯めてお休みの日は会いに来るから」
「・・・分かってないなぁちゃん。大学生の出会いの場一位はバイト先なんだよ〜?」
「へぇー、そうなんだぁ」
「ちょっ、なぁに嬉しそうな顔しちゃってんの!?そんなに出会いが待ち遠しいですかコノヤロー」
「違うよ、銀ちゃんが心配してくれてるのが嬉しいの」
「しんぱ・・・・・い、するに決まってんだろーが・・・」
「私ってそんなに信用ない?」
「や、信用ないとかじゃなくてさ。ちゃんくらい可愛いと引く手数多だしなぁ。
 ほら、遠恋先のオッサンより近くのイケ面って言うだろ?」
「なにそれ?はーぁ、信用ないなぁ。私は銀ちゃん一筋なのに」
「・・・ん〜・・・や〜、だからその〜・・・」
「まぁ好きなだけ疑えば良いさ」
「えェェ!?投げ遣りですかァァァ!?」
「そうじゃなくて。どんなに言葉にしても不安なら、私は四年かけて銀ちゃん一筋だってことを証明してみせるまでだってこと」
「・・・・・・?」
「実際に貫いて見せれば疑いようもないでしょう?それで、四年経ったらまたちゃんと銀ちゃんの側に帰ってくるから。ね?」



ね?ってお前・・・

・・・・あぁぁぁ〜もうっ!!



、今日送ってくから。早く支度して車行くぞ」
「え?何、突然・・・どしたの?」
「これ以上ここにいたら俺学校でのこと押し倒しそうだ」
「なっ・・・!」
「もう勉強終わったんでしょ?ほら、早くしないと先生マジだよ?マジで発情5秒前だよ!?」
「銀ちゃんってば〜〜〜っ!!」


赤面したに笑う。
さすがにここじゃあねぇ。いや、教室でっていうシチュエーションも燃えるんだけどさ。
卒業前にバレてお前に大変な思いさせたくねェしな。


なーんて言いながらもやっぱり車まで待てなくて、立ち上がったにキスしちまったのは不可抗力だと思う。うん。
だってしょうがねェじゃん。好きな女にこんな嬉しいこと言われて我慢できるかっつーんだよ。


こうなったら是が非でも証明してもらおーじゃねェの。
とりあえずお前が四年かけて証明してくれる前に、銀さんがいかにお前のこと好きかこれから車でたっぷり証明してやっからな?













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 ベスパじゃねェのかよというツッコミはナシの方向で・・・(脱兎)