−頼−


『へーい、万事屋でぇーす』


数コールならした後、気の抜けるような声が聞こえてきた。


『もしもぉーし?』
「あ、えっと、銀ちゃん?」
『あ?か?』
「うん、そう」
『おー、どしたー?』
「や、どしたっていうんでもないんだけど・・・」
『はい?』
「えーと、なんとなくっていうか・・・」

気まずい感じに言葉を濁すと、『オメーな〜』って呆れたような声が聞こえてきた。

『これねぇ、仕事用の電話なの。分かる?依頼用なの』
「う、うん」
『お前とこうして話してる間に依頼逃しちゃうかもしんないでしょ?』
「あー、そっか。はい」
『用もないのに掛けてくんじゃないの』
「はい・・・ごめんなさい・・・」
『ったく、ジャンプいいとこだったのによぉ』


呆れられるかなとちょっと予想はしてたけど
こんな普通に説教されると思ってなかったからちょっとヘコんで。
だけど多分電話うんぬんじゃなくて、彼が怒ったのはジャンプ読んでるのを邪魔されたからだろう。
そう思ったらちょっとほっとした。


「それは失礼しました」
『オメー反省してねーだろ?』
「いや、してるよ。してます」
『あそ。ならいいや』
「・・・・・・・」
『んで?』
「へ?」
『いや、へ?じゃなしに。なんか用件』
「や、だから無いってさっき」
『ばーか。お前それじゃあ堂々巡りだろうが。
 用なきゃ掛けてくんなって言われたら無理やり用件作ればいいんだよ』

どういう理屈だろうかと思ったが、これはきっと彼の意識がジャンプから私に移った証拠だろう。
相手をしてくれる気になったんだ。これは逃さないように慎重にしなくちゃ。

「えーと・・・用事・・・用事・・・」
『もしくは依頼。あ、つーか依頼くれ。これ仕事の電話だから』

え〜?絶対お金取られそうなんだけどそれ。
きっと仕事ないんだなまた。え〜依頼〜?

「えっとぉ・・・依頼かぁ・・・」
『そう、依頼』
「あーじゃあ・・・」
『お、まじであんの?』

あんまり期待してなかったんだ。

「うんと・・・依頼っていうか・・・」
『何よ?良いから言ってみ?』
「あの・・・」
『うん』
「えーと・・・」
『はいはい』
「・・・・会いたいんですけど・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
「・・・・・銀ちゃん?銀ちゃーん?も、もしもーし?」


たっぷりとした沈黙に焦って問いかけると、盛大なため息を吐かれた。


「ご、ごめん。依頼ってアレじゃなかったね。ほんとスンマセンほんと」
『・・・おっまえさぁ〜』
「は、はい」
『それ狙ってやってんの?』
「ねら・・・?何を狙うの?」
『あーよけーたち悪いよこの子ォ〜』
「えっ?何が?何がですか?」

ぐぉぉぉーっと唸る声が受話器の向こうから聞こえてくる。
がこんがこんいってるのは、何の音だろう。・・・悶えてる?
銀ちゃんはやっぱり質問に答えてくれることなくまた大っきいため息を吐いた。

『お前今家?』
「うん、そう、家」
『・・・あー、とりあえず今から行くんで・・・』
「え?あ、あの、いいよ、無理しなくて?」
『やー、無理とかじゃなくてさァ・・・ん、まぁいいや』
「え?え?え?」
『言っとくけどコレ依頼料高ェかんな』
「えぇ!?私そんなにお金ないよ・・・?」
『まぁそこは心配すんな』
「???」
『んじゃそゆことでー』

がちゃん。

なにがそういうことなんだか訳も分からず私もがちゃんと受話器を置いた。
よく分からない。
分かってるのは、これから銀ちゃんに会えるってことだけ。
十分。それで十分だ。

私は急いで部屋を片付け始めた。








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 依頼料を何で支払わせられるかはご想像にお任せして・・・