−伸びする恋心−


 Q.恋人の身長はどのくらいが理想ですか?


「俺は別になんでもいーな」
「小さなレディーは包み込んであげたくなるよなァ〜、けどすらりとした長身の美女も素敵だーッ!」
「私が高めのヒール履いた時より少し高いくらいがベストかしらね」

ラウンジで始まったなんてことのない世間話だったけれど、私にとっては重大なテーマだった。
ルフィやサンジ君、ナミの言葉に相槌を入れながらも私の関心はひとりだけに集中する。
いよいよその人が答える番になり、私は平静を装いながらも内心緊張していた。

「まァ俺より背の高ェ女なんかそうそういねェしな。フツーにありゃなんでもいーぜ」

事も無げに答えるフランキーの言葉に私の思考回路はぐるんぐるんと回りだす。
フツーって・・・225cmの人の普通ってどんくらいですか!?私はセーフなの?アウトなの・・・?

私が悶々としているのを他所にゾロが面倒臭そうに口を開く。

「あんまり身長差あンのは面倒くせェな。ヤりずれ・・・」
ゴンッ!
鈍い音と共にゾロの頭はテーブルへと沈んだ。

アンタは表現が露骨過ぎんのよッ!とナミに阻止され後半はよく聞き取れなかったけど、その一言は私の胸に刺さった。
め、面倒くさいものなのかな・・・?

急速に落ち込んだ私は話を振られたけど適当に返した。なにか言ったとは思うけどあんまり覚えてない。
あーぁ、私は・・・フランキーの恋愛対象外なのかなぁ・・・




新しい島に着いてクルー達は嬉々として船を降りていく。
私も降りようとした時、すでに上陸しているフランキーとロビンが並んで話しているのが目に入った。
なんとなく目が離せなくなり、船縁に頬杖をついてその光景を眺める。

お似合い・・・だよなぁ・・・

ロビンはモデルのようにすらりとした長身だから、ありえないくらい大きいフランキーと並んでも全く遜色がない。
私は一般的な女子平均より少し低いくらいだし、これまで身長を気にすることはあまりなかった。
けど、この船のクルー達はやけに長身揃いで、しかも好きになってしまったのはその最たる人。
ついついその長身を羨んでしまう。
・・・まぁ、あの二人は“握って握られた仲”だし、今さら嫉妬する気も起きないっていうか・・・したら負けっていうか・・・

「おーい、!オメー上陸しねェのかァー?」
フランキーに呼ばれてはっとする。私がぐだぐだ考えている間にロビンはいなくなってしまったようだ。

「用事ねェんだったら俺と一緒に行かねーか?」
「いいの!?」
「おー!じゃあ早く降りてこいよー」

願ってもない嬉しい展開に私はつい顔を綻ばせて意気揚々と下船した。
フランキーと並んで街へと歩き出す。

白い石畳の街はレンガ造りの家が軒を連ね、まるで絵画から飛び出したみたいだった。
傾斜の多さには骨が折れたけれど、振返れば眼下に広がる白亜の町並にコバルトブルーの海という絶景が疲れを吹飛ばした。
しかしそんな素敵な街をパンツ一丁にシャツを羽織っただけの人間が闊歩するのはやはり目立つ。
すれ違う人々の視線が痛くて、私はちょっぴり恥ずかしくなった。
それでも一緒にいられる嬉しさの方が勝ってしまうあたり、恋って偉大だなぁなんてことをバカみたいにしみじみ感じた。


歩いていくと、高級そうなお店ばかりが立ち並ぶ通りに入った。
貧乏な私たちには無縁とばかりに通り過ぎようとした時、ふいにショーウィンドウに映る二人の姿に足を止めた。

―――すごい、身長差・・・傍から見るとこう見えるんだ・・・
     なんだか、これじゃあ大人と子供みたい。やっぱり私とフランキーじゃ不釣合い・・・?

ロビンとのツーショットシーンが頭を過ぎり、つい比べてしまう自分に嫌気がさした。


?どうかしたか?」

フランキーの言葉にぶんぶんと首を振る。泣きそうな顔を見せないように俯いたまま。
フランキーはどこか納得いかないような顔をしながらも、そうかと言ってまた歩き始めた。
その後を追いかけようとしたら、足にずきりと痛みが走った。無理して履いた高いヒールで歩き回ったせいだ。
馬鹿みたい・・・こんな背伸びしたって、全然足りないのに・・・。
せっかく好きな人と歩いているのに、私の気持ちはどんどん落ち込んでいった。




船へと帰る道すがらフランキーがおもむろに口を開いた。
「なんか無理やり付き合わせちまって悪かったな・・・」
びっくりしてフランキーの顔を見上げる。
「オメー元気ねぇし、疲れさせちまっただろ?」
サングラスの奥の瞳が寂しげに見えた。

何やってるんだろう私。一人で勝手に落ち込んで、好きな人に嫌な思いさせて・・・最低だ・・・
階段で立ち止まると、フランキーがそれに気づいて振り返った。


あ、顔の高さが並んだ・・・

足元を見ればフランキーとの段差は3段。たった3段だけど、なんだかすごく遠く感じる。
だけどそう感じるのはきっと自分の心次第だ。まだ気持ちも伝えていないうちから何諦めようとしてたんだろう。
こんな距離なんて、飛び越えちゃえばいいじゃない・・・っ!

「おい、・・・って、ぅわっ、危ねッ!お、おい何してんだオメーッ!?」
思い切り地面を蹴って首に飛びついた私にフランキーがおろおろと慌てる。


「私フランキーのこと好き!」
「はッ!?」
「大好き!超スキ!!もうすんっっっごい好き!!!」
「いきなり何言い出すんだ!?と、とにかく降りろ!!若ェ娘がハレンチなことしてんじゃねーよ!」
「あははっ、ガレーラの若頭みたいな事言ってる」
「俺をあんな照れ屋と一緒にすンな!」
「フランキーだって照れ屋じゃん。耳まで真っ赤だよ?」
「オメーだって顔真っ赤じゃねーか!」

二人して真っ赤になりながらくっついている私たちはきっと傍目から見ておかしいだろうな。
でも私のせいで染まった頬が嬉しくて、フランキーの頬がサイボーグじゃなくて良かったなと心底思った。


その後、私が足を痛めていることに気づいたフランキーがおんぶしてくれて、そのまま船へと向かった。
視界が高くなるとこんなに見える世界が違うのかと、やはり私は羨ましくなった。
けれどそれをフランキーに告げるとオメーはちんまいままでいいんだよと返された。
理由を尋ねれば、おぶるの楽でいいじゃねェか、だそうだ。

「でもフランキーはもっと身長ある人の方が良いんでしょう?」
「そりゃ相手が大変だと思ったからそう言ったんだ。
 けどオメーはその大変さが良いなんて訳分からねェこと言ってたし、俺も気にしねェことにした」
「私そんなこと言ったっけ?」
「この前言ってたじゃねェか。見上げて首が痛くなるくれェ背の高ェヤツが良いって」

私そんなこと言ってたんだ・・・無意識とはいえ本音をぶちまけてたらしい。
きっと私の気持ちなんてクルーみんなにバレていたに違いないと思うと恥ずかしさが込み上げてきた。


「でも・・・それはフランキーと出会ってからそう思うようになったんだよ?フランキーのこと好きになったから・・・」
「おォ・・・・・」
「あ、また照れた!」
「照れてねーよッ!」

いい大人なのに私の言葉にいちいち照れる姿に可愛いなんて思ってしまった。
幸せに浸っているとふいにフランキーがぼそり呟く。

「まァオメーの言葉に自惚れて今日誘ったんだけどな・・・」
「えっ!?そうなの!!?」
「なのにオメーはスーパー暗ェ顔してるし俺の勘違いかと思ってバカみてぇに街ぐるぐる歩いちまったじゃねェか・・・」

照れ臭そうな告白に目を瞠る。そう言えば今日一日中ひたすら当所もなく歩き回ってたことに今さら気づいた。
自分のことでいっぱいだったけど、フランキーもまた想い、悩んでいてくれたのかと思うと泣きそうなくらい嬉しくなった。

「フランキー大好きぃーーーーーー!!」
「馬鹿ッ!オメー首絞めンなッ!!」
ぎゅーっとしがみつくと、フランキーはまた赤くなった。


背伸びなんてみっともないと思っていたけれど、たまには良いのかもしれないと思えた。
きっとそれは自分を成長させてくれるから、自分の限界が分かればそこからもっと頑張れるから。
そうしていくうちにいつの間にか背伸びしなくてもそこに届く自分になっているんだ。
身長は無理だけど・・・でもこんな風に同じ景色を見ることは出来るから。

これからきっと見上げすぎて首が痛くなるであろう幸せな日々を予感しながら
私は再び広い背中へと抱きついた。






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 あの一味平均身長やたら高くない?