paille


愛いひと−


「てめェ・・・確信犯だろ・・・」

 

凶悪な面で睨んでくるけど、その鼻は真っ赤でずびずびいっていて

まだ目尻には薄ら涙が溜まっているものだからちっとも恐くない。

しかもあんまりにも泣き過ぎて若干疲労の色が見えているもんだからいっそマヌケなほどだ。

 

かく言う私も涙目なのだけれど。

笑いすぎて。

 

「あのなァ、動物と年寄りと子供が死ぬパターンはスーパー駄目だっつってんだろォ?

 あんなもん反則に決まってんじゃねェか!」

 

私が今日借りてきたのは、ベッタベタのお涙頂戴モノ映画だった。

フランキーは映画とかドラマとか絶対に黙って見れない人。

 

画面に向かって

「そうなのかおめェ!そりゃ辛ェなァ!はうはうはう

とか

「ヴォオオ〜〜!こんないい奴他にいねェよ!クソったれ!うおう大好きだチキショー!」

とか話し掛け続ける。

時々隣にいる私を気にして

「ハウ!アウ!何だ!コノ野郎っ、泣いてねェぞバーカ!こっち見んじゃねェ!ハウ・・・」

とか怒鳴ってまた画面に釘付けになるを繰り返す。

 

だからたかだか二時間かそこらの映画でも見おわる頃にはぐったりなのだ。

 

そしてそんなフランキーの隣で笑い転げる私。

 

始めの頃はそんなフランキーにびっくりしていたし、

号泣するフランキーを尻目に泣けない自分がなんだか非道な人間のように思えてヘコんだりしたものだ。

けれど今じゃそんな彼を思う存分楽しめるだけの余裕が生まれた。

だから本気でちゃんと見たいやつは一人で見るし、フランキーと見る時はハナから彼の反応を楽しむつもりで見る。

これが私の辿り着いた彼との付き合い方。

傍から見ればさぞかし血も涙もない彼女に見えるだろうが、別に気にしない。

 

いい年こいたオッサンがびーびー泣くのはやたら可愛い。

あんまり可愛いから思わずよしよししてやると今度は真っ赤になって照れて怒鳴るからますます可愛い。

 

そんなフランキーににやけながら、出会った頃とは随分印象が変わったものだとしみじみ思った。

 

 

 

出会ったのは飲み会の席。見るからにデカくて厳ついフランキーは周りから遠巻きに警戒されていた。

そりゃそうだ。ガタイのいい体はまるでビルみたいに威圧感たっぷり。

それに輪を掛けるグラサンと派手なシャツと青いリーゼント。

目が合ったら裏路地に連れて行かれて

「ちょっとぴょんぴょん跳ねてみなニーチャン・・・あっれー?なんかじゃらじゃらいってんじゃねェかァ?」

とか言って身包みはがされるんじゃないかなんてことをみんな結構本気で心配していた。

 

ところが酒がまわってくると徐々にテンションがおかしくなり

ゲームして負けたやつがフランキーに話しかけに行けとかいう展開になった。

勘弁してよと思いつつ、見事に負けたのがこの私。

悪い笑顔で送り出す友人たちに、殺されたら祟ってやるからと恨み言を言いながらフランキーに近寄った。

 

でも死ぬほどドキドキしていたのは声をかける寸前まで。

拍子抜けしたのは彼が飲んでいるのがお酒じゃなくてコーラだったから。

なんでコーラなんですかと聞けば「コーラ旨ェじゃん」と真顔で言われた。

 

・・・なんだこの人。もしかして面白い人か?

 

そこからなんだか意気投合して飲み明かした。遠くから心配そうに見てくる友人たちを無視して。

 

 

以来私たちは頻繁に連絡を取るようになった。

 

フランキーは一緒にいるととても発見の多い人だった。

下から見上げるとおっかなくても、見下ろせば実はなかなか愛嬌のある顔だということ。

ガラの悪いクセに異常に人情に厚く、泣き上戸であるということ。

本当は照れ屋で、中身はかなり子供っぽいのだということ。

そんなフランキーを私が好きになるまで、そう時間は掛からなかった。

 

交際が始まって友人たちにピースしながら報告したらドン引きされた。

二人並べば人攫いだの女児誘拐だのとからかわれ、その度にフランキーが暴れた。

そういうことするから怖がられるんだよ・・・と思ったけど教えてあげなかった。

だってフランキーの可愛さは私が知っていれば十分だから。

そういうところ独り占めしていたいから、なんて考える私はずるいだろうか?

 

 

 

DVDで泣かされたフランキーは尚も拗ねている。

でっかい図体で三角座りって・・・どんだけ可愛いんだアンタ。

本当に指で“の”の字書く人なんてはじめて見たよ私。

 

「よしよし、ごめんね?」

「やめろっ、撫でるんじゃねェよ!ガキか俺ァ!?」

「いいじゃん可愛いくて」

「かわ・・・ッ!?なんだ可愛いって!?」

「可愛い可愛い、フランキー大好きだよ」

「ッ・・・・・・・・・」

「照れ屋だわいな〜」

「モズとキウイの真似してんじゃねェよ!それに照れてねェ!」

「好きだわいな〜」

「っっテメ・・・!」

「ふふふっ、好きだよフランキー」

「・・・・おう」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 

気に食わないのでズビシッと頭にチョップをかました。

 

「痛ェな!何すんだよバカ!」

「“おう”じゃないでしょ?」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・俺もだ」

ズビシッ

「痛ッ!・・・わーったよ!〜〜〜ッ俺も好きだ!これでいいんだろ!?」

「えっへへ〜」

「えへへじゃねェよ・・・ったく」

 

悪態吐きながら照れる彼はやはりこれ以上ないほど可愛いと思う。

彼女の欲目だと言われるけどそんなことはない。

フランキーは本当に可愛い。

でも願わくば、いつまでも私だけの可愛い人でいて欲しい。

 

さ、今度はなんのDVD借りてこようかな。

 

 




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 「フラン○ースの犬」あたりを・・・