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太陽が真上にきた頃、ルンバー海賊団の食堂は戦場と化していた。
大皿に山盛りにされた料理は我先にと箸を伸ばす船員達によってあっという間に消えていく。

その中に一人だけ毛色の違う人間が混じっていた。
屈強な男達の中に埋もれるようにしているのは、先日この船に助けられた小柄な少女。

「なんだお前ェ、それしか食わねェのか?ダメだダメだッ、そんなんだから痩せっぽっちなんだよ。
 ちゃんと食わねェとデカくなれねェぞ?ほら、もっと食え食え!」

小皿に取った料理をちまちまと口に運んでいた少女を見かねてヨーキが口を出した。
言うが早いか大皿から料理を取り分けてどんどんと少女の皿にのせていく。
自分用の皿に山のように盛られていく料理を見守りながら少女は目を丸くした。

「ちょっと船長、食事くらい好きにさせてあげなさいよもう。ほら見なさい、びっくりしちゃってるでしょうが」
「うるせェな〜。あ、そうだ。お前あんまりブルックに近づいたらダメだぞ。コイツは女と見りゃすぐセクハラすっかんな」
「なっ、なんてこと言うんですかアンタ!人を変態みたいに言わないでくださいよ!」
「出会いがしらにパンツ見せろとか言う野郎は立派な変態だろうがよ」
「あのねェ、私だってそれくらいの分別は・・・あ、ちょっと失礼、ゲフッ」
「きったねェな!しかも顔も汚ェ!どうやって食ったらそんなに汚せるんだよ!?」

自分を挟んでギャーギャーと騒ぐ大の男二人をきょとんとして見ていた少女は、やがて可笑しそうに小さく笑んだ。

「あ!笑った!コイツ今笑ったぞ!なんだお前ェ、ちゃんと笑えんじゃねェか。
 暗ェ顔ばっかしてっから笑わねェ奴なのかと思ったぜ。ほら、もっかい笑って見せろ!」

ヨーキに強制的に笑えと促されて少女は困ったように俯く。

「船長無理言わないの!困ってるでしょうが、ねぇ?」

ブルックにフォローされるとちらりと視線を上げた少女は少しだけはにかんでみせた。
それを見た船員達は目を丸くして少女を凝視する。


か・・・ッ!か〜わいいな!


小動物を思わせるような愛らしさを垣間見せられ、大の男達はこぞってデレッとだらしなく相好を崩した。


遭難していた少女を船に乗せてから早数日。
初めは表情を暗くして塞いでいた少女も、こうして船員達と触れ合い、彼らの人柄を知るにつれ徐々にその警戒を解いていき
船員達もむさ苦しい男所帯に思いがけず加わった紅一点の少女を愛玩するとでもいうような歓迎ムードだった。


「なぁお前さ、まだ名前教えてくんねェのか?“オイ”だの“お前”だのばっかじゃ呼びづらくてかなわねェんだがなァ」

船員達に馴染んではきたものの、少女は未だに遭難していた理由を始め自身のことについては頑なに口を閉ざし続けていた。
ヨーキの質問に戸惑いの色を浮かべた少女だったが、自分に向けられる沢山の期待の眼差しに逡巡し
やがて意を決したようにぽつりと呟いた。


、です・・・」


消え入りそうなその言葉を耳にして、船員達はそれぞれに表情を輝かせる。

「そうかお前っていうのか!ぬはははは!良い名前じゃねェかッ。よーし、お前ェら歌うぞ!の名前が分かった祝いだ!」

ヨーキのセリフに自分の名前ぐらいでと焦っただったが、楽しげに歌いだした船員達の表情を見て口を挟むのを止めた。
ここは音楽を愛する者が集うルンバー海賊団。理由などなんでもいいのだ。皆何かに託けて歌い騒ぎたいだけ。

そんな船員達を見ては微笑んだ。
けれどそれはどこか辛さを隠しているような微笑み。

伴奏にバイオリンをかき鳴らしながらブルックはその表情をそっと見守っていた。

一日中そこここで音楽が溢れているような船内では、毎日どこかしらから歌や演奏が聞こえてくる。
その度に少女は切なげな表情を浮かべていたのだ。
それはまるで、叶わぬ恋でもしているかのように。

とても音楽が嫌いなようには見えない。けれど頑なに音楽から遠ざかろうとするようなその態度。
何か事情があるのかもしれない。けれど誰もが違和感を覚えながらもその理由を深く追求することは出来ないでいた。



(“”・・・どこかで聞いたことがあるような・・・)


唄う船員達の輪から外れた場所で、幹部の一人が少女の名に引っかかりを覚えていたことは
この時はまだ誰一人として知る由もなかった。











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