−Sexual blood−
「いーち、にー、さー・・・ん、ごー、はち、じゅっ!」
「ルフィ数字とんでるよ、ちゃんと肩までつかって十までかぞえてねってマキノさんが言ってたでしょ?」
「だっておれもーあきちまった」
つまらなそうに湯の中でぶーたれるルフィには苦笑して脇に置いていたフェイスタオルを手に取った。
それを湯に浸して潜らせタオルの中ほどをそっと湯の外まで持ち上げ空気を含ませると再び湯の中へと沈める。
するとクラゲのように膨らんだタオルからぼこぼこと勢いよく泡が湧き上がった。
一連の動作をなんだなんだと見ていたルフィはそれを見て目を輝かせる。
「うわっなんだそれすげー!おれもやるっ!」
知らない遊びを見つけて活き活きとし始めたルフィを見ては嬉しそうに微笑んだ。
上手く出来ず真剣になるルフィがおかしくてころころと笑う。
浴室から聞こえてくるはしゃぎ声にダイニングテーブルの椅子に腰掛けていたエースはそっとため息を吐いた。
晩御飯を作りに来てくれたマキノが、遊びに来ていた幼馴染のを
ルフィはと一緒だと珍しくゆっくりお風呂に浸かるからと風呂場へ促したのだった。
それを止めたい衝動に駆られつつも、その感情を大人のマキノに知られる事は抵抗があり結局口を噤んだ。
以前は自分だって一緒に入れていたけれど、徐々に自我が芽生え始めてからはそうすることも無くなった。
可愛い妹分だったを男としての目で見始めた自分が許せなくなり、
今も尚性別など気にもせず無邪気にと接することが出来るルフィが羨ましくも妬ましくもあった。
成長するにしたがってエースはそんな自分を持て余していた。
タタタタッと素足で走ってくる足音に耽っていた思考が遮断される。
音の方へ目を向ければすっぽんぽんの弟が雫を飛ばしながらこちらに向かって一目散に走ってくる。
ちゃんと体拭いて服くらい着てこいと注意しようとした時、突然ルフィが叫んだ。
「エースたいへんだ!が!がびょーきだ!!」
緊迫した雰囲気とその物騒なセリフにエースは何事かと浴室へと急いだ。
勢いよく脱衣所の扉を開くと、中に座り込んでいたがびくっと身を縮めて涙目で見上る。
風呂から上がった体にタオルを羽織り、軽く前を合わせているだけの格好を見て一瞬エースは怯んだ。
そんな場合じゃねェだろうがと内心で自分に舌打ちしつつそっとに近づく。
一見してどこかが悪いようには見えないが、は酷く怯えるように震えていた。
「、どうし・・・」
どうしたと聞こうとしたとき、が座り込んでいるタオルから僅かに滲む赤がに気づいた。
それは生々しいほどの鮮血。気づいた瞬間エースの体がぞくりと粟立った。
本能に訴えかけてくるそれに自身の血流が早さを増す。
「エース・・・っ」
今にも零れてしまいそうな涙を湛えて縋るように自分の名を呼ぶにはっと我に返る。
その表情にはタオルを汚してしまったことへの罪悪感と羞恥、そして未知なることへの不安と恐怖があった。
「エース、しんじまうのか!?」
エースの後ろでおろおろしていたルフィが口にした“死”という単語には一層青くなってタオルの合わせをぎゅうと握り締めた。
それに苦笑してエースはルフィへと向き直る。
「ばーか、死ぬわけねェだろ。大丈夫だ、は病気なんかじゃねェ」
「ほ、ほんとか!?」
「ああ、だからちょっとあっち行ってろ。少しと話すから」
エースの言葉に安堵したものの、やはり気になって仕方が無い様子のルフィをダイニングの方へと促す。
足音が遠ざかったのを確認して脱衣所の扉を閉めるとエースは再びに近づいた。
小さな体を一層小さくして震えるの頭をそっと撫でる。
触れられた途端にの目からぼろっと涙が零れだしそれは次々に溢れた。
「エースっ・・・わたし、ほん、とうに、病気じゃ、ない、の・・・?」
しゃくり上げながら話すを安心させるように優しく笑ってみせる。
自分だって大した知識は無いが、女の子の体にそういうことが起こるのは知っている。
そしてそれはの年齢には少し早いように思えた。
個人差はあるのだろうが、もしそうだとすればがまだそういった知識を持っていなかったとしても仕方が無い。
掻い摘んで話して後はマキノに頼もうと考え、エースは言葉を選ぶ。
「えっとな、こういうのは女の子なら誰でもいつかなるもんなんだ」
「そう、なの・・・?」
「ああ、体が大人になった証ってとこかな?」
自分の言葉にぎくりと鼓動が跳ねる。
「ほんとう?わたし、変じゃない・・・?」
「ああ、変なんかじゃねェ。だから心配すんな」
「よかっ・・・わたし、怖っ・・・ふっ・・・」
泣きじゃくる体をそっと抱きしめれば、安堵してはエースにしがみ付いた。
その頭をゆっくりと撫ぜる。濡れたまま放置された髪は既に冷たくなり始めていた。
緩く巻いただけのタオルからはうなじから背中までの白さが眩しいほどに覗き
柔らかな体から漂う清潔で甘い香りはどうしようもなく己を疼かせた。
未発達ではあるが確かにその体は成熟へと向かっているのだと思い知り、秘めていた欲望が暴れだす。
自分のことを信じきって縋るが愛おしくて堪らない。
それに比例して不謹慎なことを考える自分に心底嫌気が差した。
けれどいくら記憶から追い出そうとしても一度目にした真紅は脳裏に焼き付いて決して消えてはくれなかった。
「エース?」
名前を呼ぶ声に意識が引き戻される。それは記憶の中の声よりも幾分大人びたもの。
視線を上げればタオルを巻いたが不思議そうに首をかしげて自分を見下ろしていた。
どうかしたのと問われてぼーっとしてただけだと首を振る。
そしてちゃぷりと湯船から腕を出すと、その細い手首を引き寄せた。
「いいから早く入れよ、体冷えちまうぞ」
促されたはぽっと頬を朱に染め小さく頷き、おずおずと滑らかな足をバスタブへ伸ばした。
縁に頬杖を付きながらその様子を見上げる。
今ではもうすっかり女性らしくなった曲線は美しく、そして扇情的だ。
まさか再びこうして一緒に風呂に入る日が来るなんてあの時は想像だにしていなかった。
もちろん昔とは行為の意味が全く違うけれど。
視線に気づいたにあんまり見ないでと恥ずかしそうに咎められ嫌だねと意地悪な笑みを返す。
そんなエースをねめつけながら湯船に浸かって反対側ぎりぎりまで体を引くに苦笑した。
「っつーか見るなも何もこれじゃあ・・・お前これ入れ過ぎだろ?ドロッドロじゃねェか」
「だって見えたら恥ずかしいし・・・」
溶解度を超えているのではないかと疑いたくなるほど入浴剤を入れられた湯船は
まるで牛乳に浸かっているかのように濃く白濁し、掬い上げればどろりとした抵抗があった。
裸なんて散々見た後なのだから今更恥ずかしがらなくてもとエースは思うが、はどうもそう割り切れないらしい。
隅っこで小さくなっているについ笑みを零し、腕を伸ばすとぐいと引き寄せた。
端といっても狭い湯船では高が知れたもので、の体はあっという間にエースの胸の中に飛び込む。
「や、エース・・・っ」
「どうせ見えねェんだからこれも取っちまえよ」
「ダメ!」
の体に巻いてあるバスタオルを剥ごうとすれば必死になってそれを死守しようとする。
しかしエースの力に敵うはずも無く、するりと外されてしまったそれは湯船の中に沈んだ。
あ、と小さく声を上げたは急に心もとなくなった体を肩まで沈ませ胸の辺りを腕で隠す。
エースはそのそばかす顔をにんまりと崩しながらの腰に手を回し、引き寄せた首筋に吸い付いた。
エースの行動に焦り、身を捩って逃れようとしてもその拘束はますますを捕らえるだけ。
「エース、ダメだったら・・・」
高潮した顔で目を潤ませて嗜めるに、逆効果だっつーのと苦笑してエースはその赤い唇に口付ける。
油断していた唇の隙間からするりと舌を滑り込ませ歯列をなぞり、口内を犯す。
抵抗を見せていた体から徐々に力が抜けていくのが分かるとエースは口角をあげた。
薄く目を開けば抱き寄せた体が湯船から浮き上がり、膨よかな膨らみが露わになっている。
ああ目の毒だと疼く自分に呆れながら、もう止まんねェわと欲望に逆らうことを諦める。
本能のままに手を伸ばすと、触れた瞬間瞼の裏であの時の赤が弾けたような気がした。
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